2025/02/11

【成功する沖縄移住】離島における高校進学の現実とは

沖縄の離島の不便さを表す言葉にシマチャビというのがある。離島苦という意味だが、そのひとつに高校進学がある。卒業の季節をひかえてその問題に迫ってみる。

 

高校のある離島は3つしかない

沖縄県は大小160以上の島々からなる離島県。そのうち人が住む島(有人島)は40ほどあるが、公立高校が設置されている離島は宮古・石垣・久米島の3島のみだ。
したがって、それ以外の離島で中学校を卒業した生徒が高校へ進学するには必ず島を出なければならない
この状況は、進学する生徒やその家族にとって大きな精神的・経済的負担となっており、いわゆるシマチャビのひとつといわれている。問題を整理してみよう。

日本最西端の与那国島。当然といっては語弊があるが、高校はない。石垣島までの距離は130kmだが、500kmあるもののいっそ沖縄本島の高校に行った方がいいという発想もある。

 

進学で故郷を離れるという現実

沖縄本島や他の島にある高校に進学するため、15歳という若さで親元を離れなければならない生徒は少なくない。
その決断は、単なる進学という意味を超え、人生の大きな転機となる。
親元を離れるだけでも不安になるのは当然だ。「これまで家族と暮らしていたのに、突然知らない土地で一人暮らしをすることになった」という生徒も多い。
特に、離島で育った子どもたちは、地域全体が家族のような関係であることが多く、急に孤独を感じることがある。
進学先では寮生活をするか、下宿やアパートを借りることになる。しかし、寮がある高校は限られており、多くの生徒は親族を頼るか、自ら生活を管理することを求められる。
料理、洗濯、掃除、金銭管理・・・それまで親に支えられてきた生活が、一気に自立を迫られる環境へと変わるのである。
帰省も簡単ではない。本島に渡った生徒が故郷に帰省できるのは、年に数回に限られる。
距離的にも心理的にも島に帰るのが難しい状況になる。
フェリーや飛行機の便数が限られており、天候によっては欠航することもあるため、容易に帰省することはできない。
特に台風が多い沖縄では、帰省予定が大きく狂うこともある。進学したばかりの1年生が「台風で帰れなくなり、初めての一人暮らしの寂しさを痛感した」という声も聞かれる。

伊江島は本島からフェリーで30分と、比較的近隣の離島だが高校はない。距離的に近いのは本部町や名護市の高校だが、どうせ島を出るならと、那覇あたりの高校に進学するケースが多いという(©OPG)

 

経済的負担が重くのしかかる

離島から高校に進学するには、学費以外に生活費という大きな負担が発生する。
下宿やアパートを借りる場合、月々の家賃だけでなく、光熱費や食費などの生活費も必要になる。
高校の寮に入ることができれば負担はおさえられるが、それでも一定の費用がかかる。
離島からの進学には、年間100万円以上の追加負担が発生することも珍しくないのだ。
この金額は、都市部に住む高校生にはほとんどかからない負担である。
離島と本島を結ぶ飛行機やフェリーの運賃も高額である。たとえば、那覇-宮古島や那覇-石垣島の飛行機は、片道で1万円前後かかることもある。
これが年に数回の帰省となれば、その交通費だけでも大きな負担となる。
このため、家庭の経済状況によっては進学をあきらめざるを得ないケースも発生する。
高校進学=島を出ることになるため、家計に余裕がないと、進学の選択肢が狭まるのである。

南北大東島にも高校はない。大東寿司は島の郷土料理だが、島外に出るとなかなか食べられないだろう。高校進学で食生活も変わったりする(©OPG)

 

解決策はあるのか

沖縄県には、離島出身者向けの奨学金制度や家賃補助制度が存在する。
しかし、十分とはいえず、多くの家庭が経済的に厳しい状況に置かれている。
たとえば、「離島生の寮費補助」「帰省費用の支援」といったさらなる支援策が求められる。
そもそも論でいえば、各離島に高校が設置されるのが理想である。しかし、少子化の影響で生徒数の確保が難しいという問題がある。
そこで、通信制高校やオンライン授業の活用が今後の鍵となるかもしれない。
また、高校分校の設置を増やすことで、一部の授業を地元で受けられる仕組みを整えることも考えられる。
これにより、完全に島を出る必要がない選択肢が生まれる可能性がある。
いずれにしても、沖縄の離島が抱えるこの現実を、多くの人に知ってもらうのが第一歩だ。その上で支援の輪を広げていきたいものである。

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吉田 直人 よしだ なおひと

沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。

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