2023/02/09

【成功する沖縄移住】「パパヤーイリチー」に見るチャンプルーとイリチーの違い

前回の記事で豆腐チャンプルーを取り上げた。一方、イリチーという料理もあって、こちらも同様の炒め物の一種である。
だが、そのふたつがどう違うのかわからない人が、案外ウチナーンチュにもいる。ハンバーガーやピザ、パスタなどで育った人たちは特にそうである。
そこで今回はパパヤーイリチーを例に、それらの違いについて簡単に紹介しよう。

広告

 

どちらも炒め物ではある

豆腐チャンプルーは前回も紹介したように島豆腐と野菜、肉などを炒め合わせたものである。

チャンプルーはインドネシア語で「混ぜる」を意味するチャンプールが語源だとする説が有力だ。

一方、イリチーは千切り様に細かくカットした素材を、だし汁とともに炒める料理。「炒り付け」という言葉が語源だという。

 

熟す前のパパイヤを炒めるパパヤーイリチー

では、イリチーの例としてパパヤーイリチーを見てみよう。

これは青パパイヤの炒め物のことである。沖縄では、パパイヤは果物ではなく野菜なのだ。

オバァにパパヤーイリチーのレシピを聞くと、「パパヤーシリシリーしてからよ~、トゥーナー入れてチャラーして、ちょっとぐゎンブシーにすればいいさ~」といった感じの返事が戻ってくる。

訳すると、「パパイヤを千切りにして、ツナといっしょに炒め、フタをして少し煮込めばいい」となる。あとダシ汁はもちろん、豚肉、ニンジン、ニラなども入れたりする。

食感は、柔らかい大根といったところ。意外にクセのない、素直な味だ。だが、それだけに他の素材やダシのうまみを吸いこんで絶妙な風味に仕上がる。ごはんにもよく合う

パパヤーイリチーは、千切り青パパイヤとニンジンとツナを炒めるだけの実に簡単な料理。しかし、出す食堂が昔より少なくなった気がする。

 

実は科学的合理性がある

パパイヤを炒めるなんて、果物としか思っていない日本人には違和感があるかもしれないが、実は科学的根拠もある。

青パパイヤには強力なタンパク質分解酵素であるパパイン酵素がたくさん含まれていて、体内の老廃物や脂肪を除去するので、新陳代謝を活性化し、ダイエット効果まで期待できるのだ。

パパイン酵素入りの洗顔料で顔を洗うと、古い角質がすっきり落ちて美肌効果があることもよく知られている。

 

高級果物もオジィオバァはB級食材と認識

なのにウチナーンチュはパパヤーイリチーをあまりありがたがらない。貧乏人の料理だと思っているようだ。

少なくとも筆者の認識では、パパヤーは庭で勝手にぶら下がっているもので、買うものではない。雑草と同じだ。

大根もキャベツも買えない貧乏人の食いものというのが、オジィオバァの常識である。パパイヤ鈴木さんは、沖縄では差別されるかもしれない。

 

違いは豆腐が入っているかどうか

さて、肝心のチャンプルーとイリチーの違いだが、これは簡単。ウチナーンチュの認識でいえば、豆腐が入っているかどうかだ。

もちろん、豆腐が入っている方がチャンプルーで、入っていないのがイリチーである。

そして、どっちかというとイリチーの方がバージョンが多いというのが実感だ。

たとえば、昆布がメインのクーブイリチー、かんぴょうイリチー、おから主体のうからイリチー、大根のデークニイリチー、ゴボウのグンボーイリチーなど。

しかし、どちらが一般的かというとチャンプルーに軍配が上がる。

豆腐が入ればチャンプル―。それが主役になれば豆腐チャンプルーだ。

 

極めつけは豚の血炒め

極めつけはなんといっても、固めた豚の血を炒めたチーイリチーだ。

他のイリチーはともかくとして、この料理に豆腐を入れてチャンプルー化しようなどとはさすがに思わないし、できたものの見た目を考えると夜も眠れないほどである。

一覧に戻る

同じカテゴリーの人気記事

2024/07/05

【成功する沖縄移住】夏はやはりオリオンビール、でもこの距離感...

2024年の沖縄地方は6月20日に梅雨が明け、それ以降は最高気温33~34℃というハンパない暑さが続いている。こんな時は、やはりオリオンビールで暑気払いするのが良さそうだ。普段ビー……

2023/10/26

【成功する沖縄移住】貧乏だから豊かになった? 長寿県を支えた...

かつて沖縄は長寿の島といわれた。その要因のひとつは食にある。ではどんな食生活が長寿県を支えていたのか。長寿の島復活への道を思い描きつつ、考えてみたい。 具体的には食材と料理法 ……

2023/10/18

【成功する沖縄移住】夏の「野菜不足問題」とウリ系のがんばりを...

沖縄といえば健康野菜の宝庫というイメージがあるが、実は夏は暑すぎて葉野菜が栽培できないという問題が昔からあった。それを補ってきたのがウリ系の野菜だ。今回は、ウリはエライというお話で……

人気の記事 (note)

承ります 承ります
  • ・本サイトへの広告掲載のご依頼
  • ・執筆のご依頼
  • ・その他お問い合わせ

吉田 直人 よしだ なおひと

沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。

著作の紹介

移住者のための沖縄仕事NAVI

沖縄で仕事を探す! 移住者のための沖縄仕事NAVI

沖縄移住を成功させるカギ、それは仕事だ! 沖縄における就職事情と、仕事をゲットするコツを伝授。

金なし、コネなし、沖縄暮らし!

沖縄移住のバイブル! 金なし、コネなし、沖縄暮らし!

暮らしも遊びも人付き合いも、生活のすべてを網羅した面白本。ウチナーンチュが本音で語る沖縄暮らしの真実。

沖縄移住ガイド 住まい・職探しから教育まで実用情報満載!

沖縄暮らしのAtoZ 沖縄移住ガイド 住まい・職探しから教育まで実用情報満載!

どこに住むか、どう働くか、子どもの教育をどうするか・・・客観的視点から生活の実際を紹介する実用ガイド。

沖縄のことわざ

しめーしっち むのーしらん学問はできても物を知らなくてはダメ