【成功する沖縄移住】「パパヤーイリチー」に見るチャンプルーとイリチーの違い
前回の記事で豆腐チャンプルーを取り上げた。一方、イリチーという料理もあって、こちらも同様の炒め物の一種である。
だが、そのふたつがどう違うのかわからない人が、案外ウチナーンチュにもいる。ハンバーガーやピザ、パスタなどで育った人たちは特にそうである。
そこで今回はパパヤーイリチーを例に、それらの違いについて簡単に紹介しよう。
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どちらも炒め物ではある
豆腐チャンプルーは前回も紹介したように島豆腐と野菜、肉などを炒め合わせたものである。
チャンプルーはインドネシア語で「混ぜる」を意味するチャンプールが語源だとする説が有力だ。
一方、イリチーは千切り様に細かくカットした素材を、だし汁とともに炒める料理。「炒り付け」という言葉が語源だという。
熟す前のパパイヤを炒めるパパヤーイリチー
では、イリチーの例としてパパヤーイリチーを見てみよう。
これは青パパイヤの炒め物のことである。沖縄では、パパイヤは果物ではなく野菜なのだ。
オバァにパパヤーイリチーのレシピを聞くと、「パパヤーシリシリーしてからよ~、トゥーナー入れてチャラーして、ちょっとぐゎンブシーにすればいいさ~」といった感じの返事が戻ってくる。
訳すると、「パパイヤを千切りにして、ツナといっしょに炒め、フタをして少し煮込めばいい」となる。あとダシ汁はもちろん、豚肉、ニンジン、ニラなども入れたりする。
食感は、柔らかい大根といったところ。意外にクセのない、素直な味だ。だが、それだけに他の素材やダシのうまみを吸いこんで絶妙な風味に仕上がる。ごはんにもよく合う。
実は科学的合理性がある
パパイヤを炒めるなんて、果物としか思っていない日本人には違和感があるかもしれないが、実は科学的根拠もある。
青パパイヤには強力なタンパク質分解酵素であるパパイン酵素がたくさん含まれていて、体内の老廃物や脂肪を除去するので、新陳代謝を活性化し、ダイエット効果まで期待できるのだ。
パパイン酵素入りの洗顔料で顔を洗うと、古い角質がすっきり落ちて美肌効果があることもよく知られている。
高級果物もオジィオバァはB級食材と認識
なのにウチナーンチュはパパヤーイリチーをあまりありがたがらない。貧乏人の料理だと思っているようだ。
少なくとも筆者の認識では、パパヤーは庭で勝手にぶら下がっているもので、買うものではない。雑草と同じだ。
大根もキャベツも買えない貧乏人の食いものというのが、オジィオバァの常識である。パパイヤ鈴木さんは、沖縄では差別されるかもしれない。
違いは豆腐が入っているかどうか
さて、肝心のチャンプルーとイリチーの違いだが、これは簡単。ウチナーンチュの認識でいえば、豆腐が入っているかどうかだ。
もちろん、豆腐が入っている方がチャンプルーで、入っていないのがイリチーである。
そして、どっちかというとイリチーの方がバージョンが多いというのが実感だ。
たとえば、昆布がメインのクーブイリチー、かんぴょうイリチー、おから主体のうからイリチー、大根のデークニイリチー、ゴボウのグンボーイリチーなど。
しかし、どちらが一般的かというとチャンプルーに軍配が上がる。
極めつけは豚の血炒め
極めつけはなんといっても、固めた豚の血を炒めたチーイリチーだ。
他のイリチーはともかくとして、この料理に豆腐を入れてチャンプルー化しようなどとはさすがに思わないし、できたものの見た目を考えると夜も眠れないほどである。
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吉田 直人 よしだ なおひと
沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。
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