2025/01/07

【成功する沖縄移住】あの世の正月ジュウルクニチとはなにか

正月が明けると、ジュウルクニチというのが迫ってくる。沖縄でもあまり一般的ではない行事だが、筆者のように結婚して義実家が行う場合もあるので、知識としておさえておきたい。

 

直訳すれば1月16日

昨年12月19日にアップした冬至の記事で「沖縄には新正月と旧正月、冬至の3つの正月がある」と書いたが、実はもうひとつある。それがジュウルクニチだ。
ジュウルクニチは十六日という意味であり、1月16日のことを指す。そしてこの日はグソーヌ正月、つまりあの世の正月と呼ばれており、基本は墓参りをする。
墓参りといえば、沖縄では4月ごろに行うシーミーが一般的だが、それをせずジュウルクニチに墓参りする家もある。
シーミーと比較するとジュウルクニチは本島中南部ではあまり一般的ではなく、そのため知名度がそれほど高くない。
しかし、結婚などで新しい縁ができるとジュウルクニチと関わることもある。
数年前の正月明けのある日、本島北部で渋滞に遭遇したことがある。観光のオフシーズンであり、日曜日であったため道路が混むタイミングではないはずだった。
だが、国道沿いのお墓に人々が集まっている様子を見て、それがジュウルクニチのお墓参りであることを後で知った。
この日は1月16日であり、日曜日で天気がよかったこともあり、多くの人がお墓に向かったのだろう。

ジュウルクニチは新暦の1月16日か直近の休日、または旧暦1月16日か直近の休日に行われる。いずれにしても寒い時季なので、初夏に行われるシーミーほどのんびりした雰囲気ではない。

 

宮古・八重山地域なども盛ん

ジュウルクニチが盛んな地域は前述の本島北部のほか、宮古・八重山である。
離島では正月に帰郷せず、ジュウルクニチに帰省する人も多い。そのため、ジュウルクニチの前後には飛行機の予約が取りづらくフェリーも混雑するといわれている。
宮古や八重山地域ではこの日、学校が午前中までとなり、会社も早く終業することがある。午後はお墓参りに行くためである。
ジュウルクニチは本来、旧暦の1月16日に行われる行事である。ただし、近年では新暦の1月16日や、その前後の土日や祝日に行われることもある。
やることはシーミーとほぼ同じである。重箱料理やお餅、果物、お酒などを供え、線香を上げて手を合わせる。また、ウチカビを燃やす地域もある。
礼拝が済んだ後は、天気がよければその場でごちそうをいただきながら歓談し、お酒を酌み交わすこともある。
前述のように、特に離島では非常に重要な行事とされており、那覇港近くの三重城では、帰郷できない人がふるさとの方向に手を合わせる光景も見られる。

シーミーと同じように重箱料理を供えることが多い。ただ、お祝いではなく法事なので、かまぼこは紅白ではなく白一色となる。

 

シーミーとは違って法事に近い

一年以内に亡くなった人がいる家庭では、ミージュウルクニチと呼ばれる、故人のための特別な供養が行われる。
通常、家族が亡くなって一年以内は喪中のため正月を祝うことはしないが、ジュウルクニチはお墓参りを行う。
また、喪中ではシーミーも行わないが、ジュウルクニチは供養の行事であるためやってもいいとされている。
ただし、四十九日が明けないうちにジュウルクニチを迎えた場合は行わないことが多い。
料理の面でいうと、シーミーの重箱料理には紅白のかまぼこが使われるのに対し、ジュウルクニチでは白かまぼこだけが用いられる。
また、シーミーではあん入りの餅を供えるが、ジュウルクニチでは何も入っていない白餅を用いる。
これらの点からもわかるように、ジュウルクニチは法事に近い性質を持っているのである。

 

台湾系の人たちがジュウルクニチに変更

ジュウルクニチは鹿児島県の奄美大島でも行われているが、南の石垣島では台湾からの移住者やその子孫の一部も行っている。
もともと台湾では清明祭(シーミー)としてお墓参りをする習慣があったが、移住者の一部は八重山の習慣に同化する形でジュウルクニチに変えたという。
ふるさとの習慣を押し通せば、移住先の社会で周囲と軋轢を生じる可能性がある。
そのため、移住先に適応しようとする形でお墓参りの時期を変更したとされる。
ただし、線香は台湾から取り寄せた太くて長いものを使うなど、独自の文化を守りつつ周辺に合わせようとするバランス感覚も感じられる。

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吉田 直人 よしだ なおひと

沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。

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