【成功する沖縄移住】わが家にトートーメーがやってくる!その①
実家の仏壇に鎮座していたトートーメーが筆者の住まいにやってくることになった。ナイチャーにとっては「トートーメーってなに?」となるかもしれないが、沖縄に移住してきたら仲良くする可能性もあるので、その実像について解説してみる。
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単純に位牌とはいいきれない意味がある
トートーメーは一般的に位牌を指すとされるが、本来の意味は必ずしもそれだけではない。
トートーメーは漢字で「尊御前」と書き、「尊いお方」を意味する。この尊いお方とは、ご先祖様のことである。
位牌には亡くなったご先祖様の名前が記されており、位牌とご先祖様が一体となった存在としてトートーメーと呼ばれるようになったのである。
また、トートーメーは単に位牌そのものだけでなく、位牌をめぐるしきたりや家、その継承に関わる習慣も含む概念である。
したがってトートーメーとは家そのものともいえる(建物ではなくて)。なので、財産を相続するときはトートーメーがついてくるのが普通だ。
というより、トートーメーを継げば家や土地やアパート、クルマに牛豚、犬猫に借金まで全財産がいっしょについて来るのである。
このため、トートーメー=沖縄の位牌という単純な図式では捉えられないことを認識しておきたい。
とはいえ実質的にトートーメー=位牌
ただし、現在の沖縄ではトートーメーと位牌はほぼイコールと認識されている。
事実上、沖縄における位牌はご先祖様と一体化した存在としての観念が強く、トートーメーは祖先を象徴する存在といえる。
沖縄では位牌のことを「イフェー」「イヘー」と呼び、宮古地域では「イパイ」とも呼ばれる。
また、古くはトートーメーが「月」を意味することもあった。月もまたご先祖様のように尊い存在とされていたのだろう。
ではそもそも位牌って何?
位牌とは、亡くなった人の霊が宿る場所を指す。実態としては木製の板であり、そこに戒名や没年月日が記される。
位牌を祀る風習は中国、韓国、日本で行われてきたものであり、その起源は儒教にあるとされる。
儒教において先祖を祀るために用いられた位牌が、後に仏教にも取り入れられたという歴史を持つ。
日本には鎌倉時代に伝来したとされ、700~800年前から存在する古い文化である。
日本の位牌とトートーメーの違い
本土における位牌は、故人1人につき1つ作られるのが基本である。戒名や没年月日が刻まれ、これに対して生前と同じように挨拶をしたり供え物をしたりするのが一般的だ。
一方、トートーメーにはご先祖様の名前が一列に並んでおり、見た目だけでなく本質的にも大きな違いがある。
また、本土でも位牌をひとつにまとめて先祖位牌とすることがある。
ただし、これはトートーメーのような先祖崇拝の対象ではなく、位牌の数が増えた際にスペースを節約するための実利的な動機によるものである。
先祖位牌を作成すると、それまでの個々の位牌はお焚き上げにより処分されるのが一般的だ。
整理すると、本土の位牌が亡くなった人個人を祀るものなのに対し、トートーメーは先祖崇拝という信仰において欠かせない存在ということになる。
というわけで、トートーメーは単なる先祖の集合位牌ではなく、宗教的・文化的に非常に重要な存在であり、その継承において厳格なルールが設けられている。
このルールが現代の法律や価値観と衝突することがあり、トラブルの原因となることもあるのだが、そのあたりは長くなるので次回の記事で解説したい。
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吉田 直人 よしだ なおひと
沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。
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