2024/12/27

【成功する沖縄移住】豚正月とはなにか? 正月料理をひもとく

雑事に追われて意識がもうろうとしているうちにクリスマスが過ぎてしまい、気がつけば年末。正月料理用食材の買い出しに行かなくてはならない。そこから連想して、沖縄の正月料理について少し解説してみたい。

 

王国時代からの文化を反映する沖縄正月料理

沖縄の正月にはいわゆる「おせち」は出てこない。とはいえ、テレビを見ていたらジャパネットタカタが通販でうまそうなおせちを売っていたりして、食指が動きそうになることは認める。
だから、沖縄でも正月におせちを食べる人がいるかもしれない。ついでにお雑煮をすする人もいるかもしれない。
とはいっても、沖縄の正月料理は琉球王国時代からの伝統や文化、風習が反映された特徴的なフードであることは間違いない。
おせちと沖縄正月料理は、少なくともピザとハンバーガーくらいには違うのだ。で、具体的にどんな料理かというと、次のような感じである。

 

豚肉トッピング年越しそば系

沖縄で年越しそばを食べるようになったのは比較的最近のような気がする。日本文化の影響なのだろう。
ただ、そうはいっても日本そばではない。あくまでもアイデンティティたる沖縄そばである。もちろん紅白歌合戦を見ながら食べるのだ。
ちなみに沖縄に「豚正月」なる言葉がある。ご承知のようにウチナーンチュは豚肉が大好きであり、特に正月は豚肉三昧しようとする。
山羊が好きなら山羊正月でもいいし、ステーキ狂いなら牛正月でもいいし、焼き鳥マニアならニワトリ正月でもいい。だが、ウチナーンチュは本能レベルDNAレベルで豚にこだわる。
そうすると、年越しそばも豚のあばら肉がドーンと載ったソーキそばが喜ばれるのはいうまでもない。
もっと豚肉にこだわるなら、筆者の実家で食べていたようなソーキ汁でもいいかもだ。すでにそばではないのだが。

年越しそばとして日本そばを食べる家庭は移住者世帯くらいだろうか。ふつうは沖縄そばで、特にソーキそばの人気が高い(©OCVB)

 

そばにこだわらなければ年越しソーキ汁もうまい。麺がのびる心配もいらないし、じっくり味わえるので酒のアテにも最高。

 

直球の重箱料理および変化球のオードブル系

伝統的な正月料理のメインは重箱料理である。これが沖縄におけるおせち的なものといっていいだろう。
とはいえ、内容はシーミー(清明祭)、お盆、各種祝い事などで振る舞われるのとほとんど同じである。
具体的には、豚正月の象徴でもある三枚肉の煮付け、かまぼこ、揚げ豆腐、魚天ぷら、ゴボウ煮、昆布巻き、田芋の煮物など。あとは餅である。ちなみに沖縄には餅つきの習慣はない。
ただ、近年は、この重箱料理を作るのがめんどくさいのか、または嗜好の変化なのか、スーパーや惣菜店などで売っているオードブルを導入する家庭が増えている。
内容はウィンナーやエビフライ、唐揚げなどが中心だ。もはや琉球伝統の料理ではなく、もちろんおせちでもなく、もっといえば正月ともあまり関係がない。
オードブルなら、お盆だろうが結納だろうがクリスマスだろうが、どんなイベントにも対応できるオールラウンダーということになる。
お手軽だからいいのかもしれないが、正月料理としてはきわめて変化球的だと思われる。

伝統的な重箱料理は日本本土におけるおせちの役割を果たす。おせちに比べるとはるかにシンプルで、質素とすらいえるかもしれないが、昔はクヮッチー(ごちそう)だった(©OCVB)

 

近年幅をきかせているのがこうしたオードブル。2~3,000円くらいから買えるからコスパもタイパもいいけど、なんだか味気ない。

 

お雑煮の代わりとも考えられる汁物系

お雑煮をすする人がいたとしても、もちろんそれは琉球伝統ではない。沖縄でお雑煮に匹敵するものといえば豚肉入りの汁物だろう。
まずは中味汁。豚の内臓(主に腸)を使った郷土料理であり、正月や祝いの席に欠かせない一品である。
豚の腸を何度も何度も丹念に洗い、ダシや塩で味付けして煮込んだ澄んだスープが特徴だ。清めの意味も持つとされている。
イナムドゥチも人気だ。甘めの白みそベースの汁物であり、豚肉はもちろんかまぼこ、こんにゃく、椎茸など具だくさんな内容が特徴である。
正月に限らず祝いの席で供されることが多く、みそのコクと具材の旨味が合わさったぜいたくなスープといえる。

沖縄の正月料理は、本土とは異なる素材や味付けが特徴であり、人々の生活や信仰を深く感じることができるものである。正月は、おいしく食べるだけで文化に触れられる機会といってもいい。

臭みのある豚の腸を丁寧に洗って作る中味汁は、手間はかかるが上品な味わいでとてもうまい(©OCVB)

 

イナムドゥチは直訳すると「猪もどき」で、猪はイノシシまたは豚のことである。いずれにしても豚系の肉がたっぷり使われた、豚正月にふさわしい料理といえる(©OCVB)

 

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吉田 直人 よしだ なおひと

沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。

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