【成功する沖縄移住】沖縄は電気料金が高いってホント？

沖縄に移住してみて、「電気代が高い」と感じる人も多いはずだ。実際、沖縄の電気料金は全国の中でも高い水準にある。なぜなのかを解説してみる。

沖縄の電気代の高さとその理由

沖縄の電気代は、他の地域と比べて1kWh（キロワットアワー）あたり3〜5円程度高いとされる。
たとえば、1か月に300kWh使う家庭の場合、月1,000円以上、年間で1万円以上も多く払う計算となる。
電気代が高い最大の理由は原子力発電所がないことだ。沖縄電力（株）の発電所は太陽光や風力がわずかにあるものの、大部分は火力である。
つまり沖縄は、ほぼ火力発電のみに依存しているわけだ。そのコストは燃料によって違いがあるものの、1kWhあたり12.3円～43.4円とされる。
その燃料は石炭、石油、天然ガスなどだが、ほとんどは外国から輸入しているため、円安や世界的な価格変動によって電気料金が上がりやすいのが現状である。
一方で原発の発電コストは1kWhあたり10.1円と試算されている。原発の燃料はウランだが、その燃料代が極めて安いのだ。
島しょ県であることも背景にある。離島が多く、それらにも電気を送るには、送電線や発電所の建設・維持に多くのコストがかかる。
また、他県のように電力を融通し合うことができないため、自前で電力をまかなう必要がある。このような事情も電気代の高さに影響している。
さらに、電力市場としての規模が小さいこともある。沖縄電力は、沖縄県のみを対象とする小規模な電力会社である。
利用者が少ないため、発電コストを効率よく下げることが難しい。いわゆる規模の経済が働きにくいのだ。

沖縄電力の宮古第二発電所。もちろん火力であるが、2本の煙突など、建築物の無骨さと宮古島の海の美しさのギャップに思わず笑ってしまう。

原子力発電所ができた場合のメリット

とはいえ、沖縄電力は20年あまり前から原発建設の研究を進めているという。
もし将来、沖縄に原子力発電所が建設された場合、どのような変化が起きるのか。
原発ができた場合のメリットとしては電気料金が安くなるかもしれないことだ。
原子力発電は、前述のように燃料コストが安いので、いったん運転を始めると長期間安定的かつ経済的に電力を供給できる。
そのため、為替や国際的な燃料価格変動の影響が少なくなり、電気料金が安定したり、下がったりする可能性がある。
また、CO₂（二酸化炭素）を出さないため、地球温暖化を防ぐ方法として注目されている。
さらに、原発の建設や運営には多くの人がかかわるため、雇用が増え、地元経済にプラス効果が期待できる。

沖縄にも再生可能エネルギーとして風力や太陽光、水力もあるにはあるが規模は小さく、発電能力は火力や原子力にははるかに及ばない（©OCVB）

原子力発電所ができた場合のデメリット

逆にデメリットだが、台風などの自然災害により原発が被害を受けるリスクがある。福島第一原発事故の記憶もあり、安全性に対する住民の不安は大きい。
万一放射能漏れでもあったら観光業も壊滅的な打撃をこうむるだろう。
放射性廃棄物の処理の難しさもある。原子力発電で出る高レベル放射性廃棄物（強い放射能を持つゴミ）は、何万年も安全に管理しなければならないが、その方法はまだ決まっていない。
さらに地政学的なリスクもある。沖縄には多くの米軍基地があるため、万が一の戦争やテロなどのときに原発が狙われる危険性もある。

こうした原子力発電所が沖縄にできて、万一事故でも起きたらどうなるか。それを考えると電気料金の高さなどは許容範囲と考える県民も多いだろう。

原発を作るには地域の理解が必要なのは当然

沖縄の電気料金が高いのは、原発がないこと、地理的な制約、電力会社の規模が小さいことなど、さまざまな理由がある。
原子力発電を導入すれば電気代が下がる可能性もあるが、安全性や環境問題、地域社会との合意形成など、多くの課題があるのはたしかだ。
将来、沖縄がどのようなエネルギーを選ぶかは、単なるお金の問題ではなく、地域の暮らしや未来の姿に深く関わる大切なテーマである。
今後の議論と選択には、地域の人々一人ひとりの関心と理解が必要だ。