2024/08/06

【成功する沖縄移住】米軍基地で稼げる可能性はある?

割のいい仕事が少ない沖縄では、米軍基地従業員の職に人気がある。もちろんウチナーンチュだけでなく、移住者にとっても狙い目だ。いわゆる軍用地の借地料を得ることもあわせて、米軍基地で稼ぐことについて考えてみる。

 

米軍基地従業員は国家公務員に準ずる身分

日本の国土面積の0.6%しかない沖縄県に、全国の70.3%の米軍基地が集中している。
もちろんこれは由々しき問題なのだが、一方で基地から得られる収入を生活のカテにしている人がいるのも事実だ。
まずは、米軍基地で働く人々。全国の米軍基地で働く日本人従業員の数は、2021年のデータでは約26,000人、このうち沖縄県内の米軍基地で約9,000人が働いている。
だがこの人たち、米軍に直接雇われているわけではない。
昔は直接雇用だったが、米軍が勝手な都合で大量に首を切ったりして、安心して働けないというので、日本政府が雇って給料を払い、米軍が使う形にした。いわゆる間接雇用である。
これによって、基地従業員は国家公務員に準じた扱いをされることになった。
したがって、失業率が高く、給料の安い沖縄では、基地従業員は人気の職種である。
収入が安定しているので、地元の銀行が、公務員と基地従業員に限定した低利のローンを売り出すほどである。
その平均月収は30万円前後である。年収にすると500万円くらいだろう。
身分もきちんと保証されるので、沖縄では、やはり恵まれているといっていいだろう。
だから、英語に自信がある人は、移住後に米軍基地への就職を狙うという手がある。

極東最大の米空軍嘉手納基地。基地はいつかなくなるが、それまでは働けるという考え方もある。

 

いつまでもあると思うな親と基地

とはいえ、米軍基地への就職は狭き門と化しつつあるのも事実である。沖縄の米軍基地従業員は1960年代半ばには2万8,000人もいたが、現在は3分の1以下になっているのが実態だ。
基地は縮小傾向にあるので、今後も採用人数が増えることは考えにくいし、米軍の再編によって職場そのものがなくなることもありえる。
そこまでは行かなくても転勤というのもあるらしい。
筆者の知り合いのシングルマザーは普天間基地に勤めているが、普天間がなくなって辺野古の新基地ができれば、そちらへの異動を命じられる可能性があるという。
そうなったら、小さい子どもを抱えてやんばるのへき地へ引っ越さなくてはならないからどうしようと、頭を抱えている。
以前地元紙に、基地従業員の労働組合の委員長を務めた人物の、次のようなコメントが載っていた。
「基地は、いつどうなるかわからない。いつまでもあると思うな親と基地」

 

米軍基地の地主には借地料が入る

一方で、米軍基地から上がる借地料で働かずに暮らす人もいる。
道を歩いていると、「軍用地買います」「軍用地売ります、年間地料100万円」などといった看板を見かけることがある。
これは、米軍に貸している土地を売買する不動産屋の看板だ。そのいわゆる軍用地に対しては、借地料が払われるから、軍用地を買うという不動産投資も可能なのである。
実は今軍用地と呼んでいるのは、歴史的に見ると戦後米軍が無理矢理取り上げた土地である。
1950年代に入るといちおう借地料が払われることになったが、その額は年間で1坪(3.3㎡)あたりタバコ一箱分程度だった。
しかも米軍は、これを20年契約にしようとしていたため、さすがのウチナーンチュも激怒し、いわゆる土地闘争も展開されたのである。
そうした経緯を経て、現代ではちゃんと借地料が払われるのだが、これは日本政府の思いやり予算から出ている。
つまり、日本国民が納めた税金でまかなわれているのだ。そして、借地料という利益を生み出す軍用地が投資の対象として売買されるのである。
専門紙には「売軍用地・陸軍貯油施設・262坪・1840万円・年間地料80万円」「嘉手納飛行場滑走路・92坪・1501万円・年間地料48万円」「嘉手納弾薬庫・1256坪・2195万円・年間地料91万円」などといったリアルな広告が載っている。

街中で軍用地買取りますなんて看板が堂々と立っているのは、考えてみれば沖縄だけかも。基地のない平和と基地のある利益というジレンマが沖縄の現実であり、軍用地問題はそれを端的に表現している。

 

土地を返せと叫ぶ人と借地料でグータラ暮らす人

軍用地主には大きく分けて2つのタイプがいる。あくまでも自分の土地を返せという反戦地主と、借地料でフトコロを潤した方がいいから返さないでくれという立場の地主だ。
借地料が年間数百万円にのぼったりすると、働かなくても暮らせるので、返してほしくないと考える人もいるわけである。
しかし、不労所得で怠惰に暮らす人間が多いと、地域経済は発展しない。沖縄が基地依存経済から抜け出せない一因がここにもある。
朝からゴロゴロしてて、パチンコ屋行って、愛人の家に寄って、帰ってきたら酒飲んで寝る父親を見ていたら、子どもだってロクな人間に育たないと思うが、このテの親父、意外に多い。

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吉田 直人 よしだ なおひと

沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。

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