2024/09/06

【成功する沖縄移住】国立公園でのエコツアーがいろいろな意味で有望という話

9月に入って少しだけ涼しくなった気がする。ウチナーンチュにとっては動きやすくなるこれからが観光シーズンだ。とはいえ地元民が定番の観光スポット巡りをすることは少ない。非日常体験としては国立公園あたりでのエコツアーが有力候補となる。

 

エコノミーなツアーではなくエコロジーなツアー

筆者はエコツアーをエコノミーなツアー(格安ツアー)のことだと長い間思っていたが、21世紀に入るころになってようやく、動植物の生態を学びながら行う観光、すなわちエコロジー・ツアーのことだと知った。
エコツアーそのものは以前からあったが、ここ10年で慶良間諸島とやんばる、2つの国立公園が新しくできたので、これらの地域でのエコツアーがさらに盛んになるのではないかと期待されている。
自然環境を壊さずに動物や植物と親しんだり、自然について勉強したりしながら、地域経済に貢献する観光商品らしいので、国立公園エリアにはうってつけだからである。
地元の視点からすれば、もともとある豊かな自然を商品に客を呼び、商品を壊さずに楽しんでもらい、金を落としてもらおうというわけだ。
なんだか自己本位な発想に思えなくもないが、従来の大規模リゾート開発でホテルやゴルフ場を造り、多数の客を呼んで、もうかった金は本土企業が全部かっさらい、地元に残るのは破壊された自然の残骸とゴミだけ、というパターンに比べるとはるかにましである。

やんばる国立公園内にある東村・慶佐次湾のヒルギ林は、国の天然記念物にも指定されており、エコツアーの舞台として有名。

 

かつて豊かな自然は不便な生活とセットだった

ウチナーンチュの、特にやんばらー(筆者のようなやんばる出身者)にとって、エコツアー(もしくはエコ・ツーリズム)の考え方は一種のカルチャーショックだった。
やんばるには緑深い山々がある。遠くから見れば美しいが、実際はハブの巣窟で、ほかにも毛虫、ムカデ、ヒル、ヤスデ、クモその他、ブキミな生物がうじゃうじゃいる。
川は清流だが、テナガエビがいるくらいで食べられる魚はいないし、泳げば溺れるし、使い道といえば飲料水ぐらいである。
海はたしかにきれいだが、なめているとやっぱり溺れるし、干潮時にはサンゴを踏んでケガをするし、遠いので水着美女も来ない。
やんばるは、そこに住む人にとっては単なるへき地であり、その自然環境は、サトウキビやパイナップルを作る以外役に立たないものと思い込んでいた。
中でも都会志向の少年少女には、豊かな自然イコール田舎だからコンプレックスでしかなく、都会へのあこがれをジャマするものであり、憎しみの対象だったりもした。
自然環境は大切なものだと、頭ではわかっていても、それは不便な生活と表裏一体でしかなかった。自然を大切にすることは都市化と金もうけを阻害するものだったのである。

慶佐次湾のヒルギ林でのエコツアーとしては、マングローブの生い茂る川をカヌーでさかのぼるメニューが人気。文句なく楽しいのでおすすめだ。

 

自然は金になると知ったときの驚き

その価値観をひっくり返したのがエコツアーの考え方だった。やんばるの自然は金になる。そこにやんばらーは驚いた。山や川や海が金を稼ぎ出すなんて、それまでの常識をくつがえす衝撃だった。
地元主導のエコツアー団体が作られ、その普及推進の取り組みが始まった。農家など、地元の自然を知りつくした人がガイドとなって実際にツアーが行われるようになる。
マングローブの生い茂る川をカヌーで探検する、徒歩で川をさかのぼって滝を目指しながら自然を観察する、トレッキングで山のてっぺんを目指す、海人とともに海とそこに住む生物について学ぶなど、さまざまなエコツアーメニューが用意されるようになった。

西表石垣国立公園内にある西表島は、エコツアーの先進地ともいえる地域で、乗合船を使ったツアーも行われている。

 

エゴツアーを阻止するガイドは仕事としても狙い目

ところが、エコツアーが本来持っている矛盾もあって、なかなか大変なようだ。つまり、地元としては客がたくさん来てくれる方がいいに決まっているが、たくさん来すぎて自然環境が壊れてしまったら、元も子もない。
観光客がたくさん来すぎてしまうことをオーバーツーリズムというが、エコツアーにおけるオーバーツーリズムは、観光資源の破壊に直接つながるから、場合によっては客を制限しなくてはならない。
ところが、自分のところで制限しても、他の業者がどんどん客を引っぱってきて自然を荒らすから、あまり意味がない
さらに、ツアーに参加せずに、つまり金も払わず勝手に歩きまわる連中もいる。困ったもんだというわけで、トレッキングで人気のある山が立ち入り禁止になったりする。
だが、これ自体法的根拠がなく、入ろうと思えばいくらでも入れるので、どれほど効果があるのか疑問である。エコツアーを普及させるには、まだ観光客のモラル度というか民度が低いのかもしれない。
勝手に山に入り、ケガをしたとしよう。ジャングルでは位置がよくわからないので、レスキュー隊が来るのに数時間かかるのもザラだ。その間に命を落とすこともあり得る。エゴツアーはやめて、ちゃんと地元のガイドに案内してもらうようにしたい。
そして、ガイドとしてのスキルを磨けば、それを仕事にすることもできるわけで、今後移住者にとっても狙い目になるかもしれない。

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吉田 直人 よしだ なおひと

沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。

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