2022/08/27

漁船を丸ごとチャーターし、熱帯魚からカジキまで「釣り」まくろう

沖縄で暮らす場合、仕事や子育て、食生活、医療などなど、事前にさまざまな面を考慮しなくてはならない。それは別の地域でも同じだ。ただ、他地域よりも充実していると、地元民として自信を持っていえることがある。それは「遊び」だ。まぁ、趣味といってもまちがいではないが、そういってしまうとパチンコとか、読書とか、編み物とか、いってはなんだがスケール感に乏しい趣味も入ってくる。せっかく世界的に認められるほど豊かな大自然に抱かれているのだから、もっと壮大に遊びたいものだ。というわけで今回は遊びの話として釣りを、特に船をチャーターして大海原に出て行う沖釣りについて触れてみたい。

 

1人5000円で一日楽しめる

あまり知られていないかもしれないが、沖縄は釣りのメッカである。赤青黄のネオンのような熱帯魚からカツオ、マグロ、巨大カジキまで、近海に生息する魚の種類は数千におよぶのだから、釣りが楽しくないわけがない。磯でもいろいろ釣れるが、これだけの豊かな海に囲まれているのだから、どうせなら船で沖に出て釣りたいと思うのは当然だ。そして海人(ウミンチュ=漁師)たちはそうしたニーズにも応えてくれる。

沖釣りに行く場合、自分の船を持っている人はいざ知らず、一般庶民は漁船をチャーターするのが基本だ。海人は、ふだんは漁をしているが、休日はチャーターに対応してくれたりするのでありがたい。料金は、朝8時出港夕方5時帰港で4万円から5万円ぐらい。船は10人近く乗れるので、人数さえそろえば1人あたま5000円ぐらいまで落とすことができる。もちろん釣った魚に対して代金を請求されることはない。5000円で丸一日沖縄の海で釣りが楽しめるのだ。ただし、仕掛けやエサ代などは含まれない。

海人にとっても、漁に出て必ず魚が捕れるとは限らない。特にこのところの燃料費の高騰で、水揚げが少なければ燃料費すら出ないこともある。釣り人がチャーターしてくれれば、海人にとっても確実な収入になるのでありがたいはずだ。

 

知らない人同士の乗り合いも

乗り合いシステムもある。釣具店が客を集めて連れて行くのもこれにあたる。チャーターでは人数を集めるのに苦労したりするが、乗り合いならそれがない。好きなときに好きな人数で参加できるし、ひとりでもOKだ。夏場は特に盛んで、ひとりあたりの料金は半日で5000円ぐらい。仕掛けやえさ代込みが多い。

沖釣りで釣れる魚の代表格はグルクンで、大きいものでは体長30cmぐらいになる。サビキと呼ばれる、小さな擬餌針がたくさんついた仕掛けで釣るのが一般的で、群にぶち当たるとひっきりなしに、時には2、3匹まとめて釣れる。沖縄の県魚にもなっているほどウチナーンチュには親しまれており、刺身、唐揚げ、煮付け、塩焼きと、どんな料理でもうまい
こんな魚が100匹近く釣れることもある。船代が5000円なら1匹50円の計算になるから、笑いが止まらない。ちなみにこの魚をクール宅急便で本土に送ってあげると、とても喜ばれる。そのうち「グルクン食べたいから釣ってこい」と、指令が来ることもあるが、まるで本末転倒だ。1匹1000円ぐらいで売ってやろうかと思う。

 

沖縄の県魚でもあるグルクン。沖釣りではこんなのが数十匹釣れることもある。ごらんのように死ぬと赤くなるが、生きているうちはきれいなブルーである。その美しさが楽しめるのも釣り人の特権だ。

 

パヤオという浮き魚礁まで行くとさらに大物が狙える

グルクン釣りでは、港から30分以内、水深50m以内のポイントでサオを出すことが多いが、もっと沖合のパヤオへ足をのばす人たちもいる。パヤオというのは水深1000mといった深い海の海面に設置された人工の浮き魚礁のことで、単なるブイであるが、この日陰部分でプランクトンが発生し、それを食べる小魚が集まり、さらに小魚を狙う大型の魚が寄ってくる。パヤオでは腹をすかせたカツオ、マグロ、シイラにカジキまでがうろうろしているので、大物釣りの醍醐味を味わいたいならこちらがおすすめだ。

 

パヤオまで行けば、こんな小物を釣り上げて、船上でさばいて食べることも可能だ。

 

船酔いとトイレにご注意を

沖釣りは楽しいが、大変な面もある。船酔いとトイレである。慣れない人だと出港から10分でダウンしてしまうこともある。そうなると、釣りの最中も寝たきりになってしまい、なにしに来たのかわからなくなってしまう。パヤオ釣りはポイントまで2時間ぐらいかかるのもザラなので、酔いやすい人は地獄の苦しみを味わうことになる。酔い止めの薬は必需品だ。

チャーターした船にトイレがないことも多い。男だけならあまり問題にならないが、女性が参加するなら、ないとヤバイ。男でも大を催した時のことを考えると、やはりあった方がいい。ちなみに釣具店主催の半日沖釣りツアーならトイレ付きの船を使うので安心だ。
筆者の友人で、西表島近海で沖釣りの最中に催してしまい、船尾から海にお尻を突き出してウ〇コしているところをサメにかじられそうになった男がいた。釣り船にトイレは必要不可欠だ。でないと漏らすどころか命が危ない。

 

健康的で家族にも喜ばれる遊びかも

また、コロナ禍も続いているなか、船一隻で5~6人程度の乗り合いならば飛沫感染の可能性も比較的低いと思われるから、沖釣りはこのご時世では健全な遊びといえるはずだ。
この原稿を書いているのは8月の下旬だが、9月に入るとグルクンも太ってきて釣り応えも食べ応えもアップしてくる。10匹も釣ってくれば妻や子も喜ぶことだろう。台風の本格的なシーズンに入ってくるのだが、それをうまく避けながら沖釣りを楽しんでいただきたい。

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吉田 直人 よしだ なおひと

沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。

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