2022/08/21

「クールウェポン」3種で長~い残暑を乗り切ろう

 

沖縄では最高気温が35℃を超える、いわゆる猛暑日はほとんどない。データを見る限り、10年に1回か多くても2回程度である。とはいえ、沖縄は夏が長い。9月は真夏、10月は晩夏、11月になってやっと初秋といった感じた。では、5月から10月いっぱいまで半年も続く夏をどう乗りきるか。それが今回のテーマであり、主役は冷やし物である。これを食べていれば、身も心も涼まるのだ。

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ブルーリボン賞を起源とする由緒正しきブルーシール・アイス

沖縄でアイスクリームといえばブルーシールだ。別にロッテやハーゲンダッツやガリガリ君を否定するわけではないが、ウチナーンチュのソウルアイスは、ふつうブルーシールである。

このブランドは、アメリカの会社が沖縄の米軍基地に勤務するアメリカ人にアイスクリームを供給するため、1948年に工場を建てたのが始まりだ。すでに70年を超える歴史を沖縄の地で刻んできたのである。アメリカ人はアイスクリームがないと生きていけないだろう。需要あるところに供給があるわけだ。

このアイスクリームメーカーの正式な社名はフォーモスト・ブルーシール(株)という。同社のサイトによると、アメリカに優秀な酪農製品に与えられるブルーリボン賞というのがあり、それを受賞した牛の名前がフォーモスト号だったらしい。それと、賞の証として商品につけられるブルーのシールにちなんで社名にしたという。1948年の設立後、紆余曲折を経て、現在はサッポログループの傘下に入っている。

商品はバニラ、チョコ、ストロベリーなどの定番から、マンゴタンゴ、紅イモ、塩ちんすこう、黒糖、シークヮーサーシャーベットなどの沖縄フレーバーもそろえている。アメリカと沖縄がごっちゃになったようなラインナップだ。アイスではないが、昔ながらのチョコドリンクは今も根強い人気を誇っている。

ブルーシールの特徴は味が濃厚なこと。カロリーの心配がないではないが、コクがあってしっかり自己主張する。これだけインパクトのある味だからこそ、ウチナーンチュの心をつかんだのだろう。敗戦後の貧しい時代に、この甘さを初めて味わった人たちはぶっ飛んだに違いない。

ブルーリボン賞といえば日本では映画の賞で、2007年度には沖縄出身のガッキーこと新垣結衣が新人賞を受賞。さらに10年後の2017年度には主演女優賞も受賞している。しかし、アメリカでは牛がもらうとは知らなかった。さぞや美人で巨乳で、ミルクをたくさん出す牛だったのだろう。

ブルーシールの「ハイサイ!グァバ&マンゴー」は期間限定らしい。果汁も入っているが、甘みよりも酸味が強くて、お子さま向けではない。

 

路上販売が基本なのでトイレが心配なアイスクリン

アイスクリンというのは、シャーベットっぽいアイスクリームである。なんとなくなつかしく、昭和を思い出させる味だが、それだけでは今の地位を築けなかっただろう。なんというか、付加価値があるのだ。

アイスクリンの付加価値というのは、かわいい女の子が路上販売している点である。ほとんどが女子高生と思われるが、制服は着ていないし、話し相手になってくれたり、なにかのサービスをしてくれるわけでもない。ただ、アイスクリンをコーンによそってくれるだけである。

彼女たちがいるのは主に国道脇で、ドライブや観光のコースが多い。歩道に設置したパラソルの下に座り、客の車が目の前に止まるのをジッと待つ。客は、そばに車を乗りつけ、助手席の窓を開けて指を立てる。その数だけ女子高生がアイスクリンを渡す。それだけだが、店に入らなくても気軽に買えて、安くてしつこくなくておいしくて、冷たくて一瞬暑さを忘れさせてくれる。味は素朴で、販売方法も原始的だが、実はかなり合理的な商売ではないかと、最近思うようになった。だから長続きしているのだろう。

でも、疑問は多々ある。まず、近くにコンビニはおろか民家もないところが多いのに、彼女たちはトイレをどうしているのか。もしかして草むらで済ますのか。あと、ひとりで座っていて拉致されたりしないのか。強盗にあったりしないのか。そう考えると、こういう商売がよく成り立つと思う。人間がおおらかな沖縄だからこそか。

国道58号線の道ばたでアイスクリンを売る女の子は、南国におけるマッチ売りの少女と呼ぶにふさわしい。

夏の昼下がりに愛人と密やかに食べたい金時豆

ぜんざいとは、日本ではお汁粉とのことで、あたたかいものだと知ったとき、筆者は本気で驚いた。ぜんざいには氷がのっているものだと、頭から信じていたからだ。恥ずかしながら、そのとき氷ぜんざいは、沖縄独自のスイーツだと初めて知ったのだった。ちなみに、お汁粉は小豆を使うが、ウチナーぜんざいは金時豆を使うのが特徴。さらに、押し麦を入れることもある。これらを黒糖で煮るのが基本だ。

しかし、夏の沖縄で食べるぜんざいは、ほとんど快楽である。かき氷の冷たさ、豆の煮汁のやさしい甘さ、白玉だんごのもちもち感。外回り仕事で疲れたとき、海から上がったとき、昼下がりの情事の後など、ちょっとしなびかけた体と心をいやし、活力を与えてくれる。ウチナーぜんざいを発明した人にはノーベル賞を与えるべきだろう。

しかも、最近のぜんざいは進化している。たとえば、女優の国仲涼子がバイトしていたことで有名な某店では、豆の煮汁で氷を作っているため、氷自体がうまいし、溶けた氷で煮汁が薄まることもない。ある意味、金時豆煮汁シャーベットである。お持ち帰りのカップは氷の固さが調節できるようになっており、たとえば「1時間後に食べる」といえば、そのころにちょうど食べごろに溶けるというわけだ。

このウチナーぜんざい、本土で売り出せば絶対人気になると思う。筆者ならスキー場で「ぜんざい」の看板を出して客を集め、ウチナーぜんざいを売りまくる。温かいぜんざいを想定していた客は、氷ぜんざいが出てきたのを見て逆上するだろうか。それとも案外リピーターがついたりして。

甘くて冷たいぜんざいは、塩せんべいと仲がいい。暑い夏の昼下がりに食べると、なんだか官能的な味である。

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吉田 直人 よしだ なおひと

沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。

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