2025/07/04

【成功する沖縄移住】島で広がる超ヤバいバエ問題とは?

沖縄で今、セグロウリミバエという外来害虫が大きな問題になっている。このハエがもたらす被害は非常に深刻で、農業や家庭菜園、さらにはウチナーンチュの暮らしにも影響が広がりつつある。

 

体長8mのハエが農業に大打撃を与える

セグロウリミバエが最初に確認されたのは名護市で、2024年3月のことだった。
そこからわずか1年ほどで、沖縄本島中南部にも広がり、2025年には本島全域での発生が確認されるまでになった。
21年ぶりの確認であり、県内の農業関係者にとってはまさに緊急事態といえる。
というのも、このハエは、ゴーヤーやキュウリ、スイカなどのウリ科をはじめ、トマトやパッションフルーツといった野菜や果物に卵を産みつける。
卵からかえった幼虫は果実の中身を食い荒らし、やがて実は腐って地面に落ちてしまう
こうなると当然ながら商品としては売り物にならず、生産者にとっては大きな打撃となるわけだ。

セグロウリミバエが蔓延するとゴーヤーチャンプルーも食べられなくなるかもしれない。そうなったら、ウチナーンチュは絶滅しかねないから、まずはこのハエを絶滅させよう(©OCVB)

 

ハエ退治に本腰を入れ始めた県と国

この問題を受けて、県と国は2025年4月から緊急防除をスタートさせた。
これは植物防疫法に基づく措置で、沖縄本島のすべての市町村が対象となっている。
対象となる植物は本島の外に持ち出すことができず、検査に合格しなければ県外への出荷も認められない
つまり、農作物の流通も厳しく制限されているという状況だ。
防除の方法としては、まず誘殺板(ゆうさつばん)と呼ばれる恐ろしげなトラップを使ってハエを捕まえる。
これを畑や公園、家庭菜園などに広く設置し、成虫の数を減らしていく。
また、発生が確認された地域では殺虫剤を散布したり、実がついている植物を抜き取って処分したりと、徹底的な対策が講じられている。
加えて、2025年6月には不妊虫放飼(ふにんちゅうほうし)という方法も導入された。
これは、あらかじめ不妊処理をした雄のハエを野外に放ち、野生の雌と交尾させることで、次の世代が生まれにくくする作戦である。

セグロウリミバエはナーベラー(へちま)にもつく。ナーベラーンブシー(へちまのみそ煮)のファンを泣かせることにならないようにしたい。

 

根絶には県民の全面的な協力が必要

こうした防除策を成功させるには、農家や自治体だけでなく、私たち県民一人ひとりの協力が欠かせない。
たとえば、家庭菜園をしている人には、ウリ科の野菜の栽培を一時的に控えてもらったほうがいいだろう。
また、育てている場合でも、防虫ネットを使ったり、収穫したあとの実をきちんと処理したりすることが推奨されている。
もしも怪しい虫を見つけたときは、市役所や防疫機関に通報することも大切だ。

バンシルーやパッションフルーツといった美味な果物の中がウジ虫天国となりかねない。それを知らずにかじったときの悪夢は二度とごめんである。

 

あの悪夢を繰り返さないために

なお、沖縄県は過去にも似たような経験をしている。20世紀に発生したウリミバエの被害だ。このハエもウリ類やフルーツに入り込んで食い荒らした。
筆者は庭になっていたおいしそうなバンシルー(グァバ)をもいで、ひとくちかじったところ、中がウジ虫だらけなのを発見して失禁しそうになった経験がある。
このときも今回と同じように不妊虫放飼を用いた防除が行われ、最終的に1990年までには沖縄県全体での根絶に成功している。
セグロウリミバエも、この成功事例を参考に、粘り強く対策を進めていけば根絶は十分に可能と期待されている。
また、セグロウリミバエは1年中活動できる害虫であり、冬でも油断はできない。定着を防ぐには、季節を問わず継続した監視と対策が必要だ。
さらに、海外や他地域からの再侵入もありうるため、長期的な視点での水際対策も重要となる。
いずれにしても、過去にも同じような困難を乗り越えてきた沖縄だからこそ、今回の危機もきっと乗り越えることができるはずだ。今こそ、県民みんなで力を合わせるときである。

一覧に戻る

同じカテゴリーの人気記事

2025/06/27

【成功する沖縄移住】移住前に知っておきたい渋滞の実態

那覇空港および近辺で交通渋滞がひどいという。緩和のために国内線ターミナルにしかなかった高架道路が国際線まで延伸されたものの、効果は限定的と思われる。しかも問題は空港にとどまらない。……

2025/06/07

【成功する沖縄移住】58号線は日本最長国道って、知ってた?

沖縄の大動脈とされる国道58号線。大動脈どころか実は日本最長の国道だ。「本当か?」と疑う人はぜひ読んでほしい。   起点は那覇市内ではなく鹿児島市内 国道58号……

2025/05/23

【成功する沖縄移住】沖縄は電気料金が高いってホント?

沖縄に移住してみて、「電気代が高い」と感じる人も多いはずだ。実際、沖縄の電気料金は全国の中でも高い水準にある。なぜなのかを解説してみる。   沖縄の電気代の高さと……

人気の記事 (note)

承ります 承ります
  • ・本サイトへの広告掲載のご依頼
  • ・執筆のご依頼
  • ・その他お問い合わせ

吉田 直人 よしだ なおひと

沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。

著作の紹介

移住者のための沖縄仕事NAVI

沖縄で仕事を探す! 移住者のための沖縄仕事NAVI

沖縄移住を成功させるカギ、それは仕事だ! 沖縄における就職事情と、仕事をゲットするコツを伝授。

金なし、コネなし、沖縄暮らし!

沖縄移住のバイブル! 金なし、コネなし、沖縄暮らし!

暮らしも遊びも人付き合いも、生活のすべてを網羅した面白本。ウチナーンチュが本音で語る沖縄暮らしの真実。

沖縄移住ガイド 住まい・職探しから教育まで実用情報満載!

沖縄暮らしのAtoZ 沖縄移住ガイド 住まい・職探しから教育まで実用情報満載!

どこに住むか、どう働くか、子どもの教育をどうするか・・・客観的視点から生活の実際を紹介する実用ガイド。

沖縄のことわざ

あしがちねー むぬやんじすん焦って行動すると、何事もうまくいかないものだ