2022/10/26

旅費3分の1で行く「沖縄発アメリカツアー」に挑戦!

日本人が海外旅行に行く場合、羽田や成田、あるいは関空、中部あたりから飛ぶケースが多い。では、沖縄から海外へ行くにはどうすればいいか。2019年ごろまでは那覇空港から台湾、中国、韓国、香港などに直行便が出ていたのだが、コロナ禍になってからは、ほぼすべてが運休している。ただ、それらが復活したとしても欧米への直行便はない。では、沖縄に住んでいるとアメリカやヨーロッパには行けないのか。そんなことはないはずで、今回はコロナ禍を押してアメリカ旅行に挑んだ経緯と、その収支決算について報告しよう

 

大谷翔平の試合を生で見たい!

もう1年近く前になるが、2021年の忘年会で筆者は「来年はアメリカ行くぞ!」と叫んだ。参加していた他のおっさん5人も「よし、みんなで行こう!」と応えてくれたものである。

というのも、この年はコロナのせいで筆者は仕事が激減し、あまりに暇だったので朝っぱらから大谷翔平の試合の中継ばかり見ているうちに、自分の目で彼の活躍を見たくなったのだ。
ロサンゼルス(厳密にはアナハイム)まで行って、球場で大谷選手の試合を観戦したいという思いが募ってきたのである。

当初は、ひとりで行こうと考えた。たとえば昼ごろLAに着いてアナハイムに移動、ナイターを見て空港にとんぼ返りし、夜中発の飛行機に乗れば0泊3日の弾丸ツアーも可能だ。

このスケジュールなら宿泊もレンタカーも必要ないから、ほぼ飛行機代のみという最低限のコストで済む。
しかしよく考えたら、せっかく沖縄からLAまで行って、野球の試合ひとつ見ただけでとんぼ返りは、あまりにもったいない。第一、試合に大谷選手が出なかったら意味がないではないか。

そこで野球観戦だけでなく、飲み仲間も誘ってアメリカ西海岸ツアーをブチ上げることにしたのである。

実際に現地で観戦した大谷翔平の試合風景。バッターボックスに立つのが大谷選手で、この直後に二塁打を放った。

 

気持ちが折れそうになるほどハードルいっぱい

「みんなでアメリカ行こうぜ!」と口でいうのは簡単だが、実行はそう簡単ではない。特にこの時期、さまざまなハードルがある。

まずコロナ。いわゆるオミクロン株が流行り始めていた時期で、アメリカ入国には出発前日か当日に受けたコロナ検査の陰性証明が、さらに日本帰国時にも出発前72時間以内に受けた検査の陰性証明が必要だった。
出発時はともかく、帰るときに現地で検査できる機関を探して陰性証明をもらわなくてはならない。言葉の問題や予約方法、そもそもどこで受けられるのか、さらに費用などを考えると、非常に大きな負担である。

エアーをどうするかも問題だ。那覇とアメリカを直で結ぶ便などないから、最低1回は乗り継ぎが必要になる。通常であればソウル、台北、上海、北京などでの乗り継ぎが望ましい。コストをおさえられるからだ。しかし、この時期やはりコロナのせいで那覇空港発着の国際線はすべて運航を休止している。

そして最大の課題は旅費である。アメリカの物価高は驚異的だ。特にガソリンの高騰はすさまじく、10年前に行ったときには1ガロン2ドル程度だったものが6ドルくらいと約3倍になっている。
さらに、2022年に入るといきなり円安ドル高が始まった。2021年の暮れには1ドル115円くらいだったのが、出発時には145円くらいまで行ったのである。実に30円くらい、約25%の円安だ。

また、上記のコロナ検査代は出発時に1~2万円、帰国時は3万円程度かかる。飛行機代に関しても実際上国内での乗り継ぎになるので、近隣アジア諸国を経由する場合よりも高くなるだろう。

ビーフカツが20ドル、2900円くらい。確かに高めだが、旅行をあきらめるほどではない。

 

オレなら旅費3分の1で連れていくぞ!

一方でアドバンテージもある。

これこそ飲み仲間をアメリカツアーに誘った理由なのだが、筆者はレンタカーを駆った大陸横断ドライブを4回行ったことがあり、縦断も2度やった経験がある。加えてカリフォルニア徘徊、ミネソタ徘徊、ハワイ徘徊などもしており、合計するとアメリカにおけるドライブ経験は約4万キロ、つまり地球1周分程度は走っている。

さらに、学生時代にひとりでカナダ・メキシコを含めた北米大陸をバスで1周したこともあり、これらによってアメリカ全50州のうち40州以上を訪れている。

簡単にいえば、アメリカ慣れしているわけで、ESTAと呼ばれるアメリカ入国許可の申請から、飛行機やホテル、レンタカー等の手配、ツアーコーディネーター、現地ガイド、運転手まで、一貫して筆者がやれば旅費を安くあげることが可能だった。いわばボランティアのヨシダツーリストである。

そういうことも織り込んだ上で「大手旅行代理店の3分の1の旅費でアメリカに連れて行ってやるぞ」と飲み仲間連中を誘ったのである。

 

小さな奇跡がいくつも起きた

コロナ禍、物価高、円安ドル高、原油高、国際線運休・・・これだけの悪条件が揃った時期に海外旅行など、普通はあきらめるだろう。しかし、コロナによる閉塞感は大きかった。特に沖縄のような狭い島に閉じこめられてなかなか外に出られないのは精神的に苦しい。だからこそ海外に飛び出したかったのである。

そこで、最終的には行けないかもしれないが、ともかく準備はしておこうと、いろいろ進めているうちにプチ奇跡的なことがいくつか起きた。
まず、エアー。日本航空の子会社で成田空港を拠点とする国際線LCCのZIPAIR Tokyoが2021年12月にロサンゼルス線を開設したのである。これなら、成田-LA往復7万円ちょっと。那覇-成田往復もLCCを使えば、合計8万円台で那覇-ロサンゼルスを往復できるのだ。

また、アメリカ入国の際の陰性証明が必要なくなり、さらに日本帰国時の陰性証明も取らなくていいことになった。いずれもワクチンの接種証明さえあればOKとなったのである。

さらに、出発直前にアメリカのガソリン価格が急激に下落した。1ガロン6ドルだったのが4ドルほどと、50%程度下がったのである。これも追い風となった。

5000キロ走って感動のシャワーを浴びてきた

このあたりで、ツアー催行が現実味を帯びてきた。国内線も含めて飛行機のチケットが取れ、ESTAの申請が通り、成田前泊も含めてホテルの手配が済み、レンタカーをおさえることもできた。あとはドルに両替し、荷物を詰めるだけだ。出発は9月半ば、シルバーウィークを活用するスケジュールである。

ちなみに、当初は筆者を含めた飲み仲間6人で行くつもりだったが、ひとりは家庭の事情で、もうひとりは仕事の都合で不参加となった。結局4人でのツアー催行になったわけである。

そして、沖縄発成田経由10日間のアメリカ西海岸ツアーが決行された。実際に訪れたのは下記である。

●ロサンゼルス(サンタモニカ、ピーターセン自動車博物館)
●エンゼルスタジアム・オブ・アナハイム
●グランドキャニオン国立公園
●フーバーダム
●ラスベガス
●ザイオン国立公園
●モニュメント・バレー
●デス・バレー国立公園
●ヨセミテ国立公園
●サンフランシスコ(ケーブルカー、ゴールデンゲートブリッジ、ロンバード・ストリート、フィッシャーマンズワーフ)

丸々1週間レンタカーを借り、運転は3人で行った。全走行距離は4900km。アメリカ大陸横断に匹敵するロングドライブで、毎日が感動のオンパレードだった。

念願だった朝日に輝くグランドキャニオンも訪れることができた。

 

アメリカ10日間で18万円を切るほどの値段

さて、問題の旅費である。この時期、原油高のせいで、いわゆる燃油サーチャージという付加料金も高騰し、日本航空や全日空でアメリカを往復すると、それだけで10万円以上の負担になる。もちろん運賃とは別だ。そうなると大手旅行代理店のアメリカ西海岸10日間のツアーに参加すると、やはり50万円くらいにはなってしまいそうだ。

では、旅行代理店のツアーに参加せず、企画も手配も現場オペレーションも自分でやった筆者たちのツアーでは、ひとりあたりどのくらいかかったか。下記はその決算である。

飛行機:87,000円(那覇-成田往復含む)
宿泊費:51,000円(成田前泊含む計8泊)
レンタカー:12,500円
ガソリン:17,000円
雑費(入場料その他):10,000円
合計:177,500円

50万円の3分の1を1万円くらいオーバーしているが、まあまあの線ではないだろうか。ただし、これには食費が含まれていない。ファストフードでいいというヤツもいたし、絶対ステーキ食うというおっさんもいて、金額がまちまちだったからだ。

ただ、10日間沖縄を脱出し、アメリカで大谷翔平の試合を観戦し、LAやサンフランシスコやラスベガスで遊び、国立公園を4か所も楽しめたのだから、コスパは大変によかったはずだ。円安や物価高は逆風だったが、そんなもの吹き飛ばせたと思う。

沖縄で暮らしながらも、いろいろ考えて手配すれば、海外へもリーズナブルに行けることの証明と受けとめてもらえればうれしい。

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吉田 直人 よしだ なおひと

沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。

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