【成功する沖縄移住】実は時代の先端を行く沖縄産業界の話
移住後に仕事を探すにあたって、沖縄産業界の実態を理解しておく必要がある。本土に比べて厳しい労働環境といわれるが、実は見方によっては日本の将来を暗示しているようでもある。どういうことか、解説してみる。
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日本の未来を先取りしている沖縄の産業界
かつて沖縄は27年間も米軍の施政下に置かれ、日本の経済発展から取り残されていた。高度経済成長の波にも乗りそこねた。そのため、産業構造も日本本土とはかなり異なっている。
その特徴として、製造業のウエイトが低い、非正規雇用者が多い、終身雇用があたり前ではない、急速なグローバル化が進んでいる、などがあげられる。
従来、これらの要素は沖縄産業界のたち遅れの表れと理解されてきた。ところがよく考えると、これらの沖縄産業界の特徴は、今の日本の産業界が抱える課題そのものではないかと思う。
もしそうなら、沖縄は日本の産業界の未来を先取りしているといえるかもしれない。そこをもう少しくわしく考えてみたい。
製造業のウエイトが低い
長く米軍の施政下にあった関係で、アメリカの国益が優先され、沖縄ではインフラ整備が遅れた。
必ずしもそれだけが要因ではないが、第三次産業の比重が大きくなり、第二次産業があまり育たなかった。
特に全産業における製造業の割合は日本全体の20.3%に対し、沖縄県は今でも4.3%に過ぎない。観光立県でもある沖縄はサービス業の島といっても過言ではないだろう。
一方、ものづくり大国といわれた日本もIT産業の発展などもあって、GDPにおける製造業の比率が相対的に低下している。もともと製造業の割合が小さかった沖縄の状況に近くなっているのだ。
沖縄の非正規雇用率は全国一
沖縄県が毎月行っている労働力調査の2023年9月分によると、役員を除く全雇用者63万2,000人のうち、正規の職員・従業員は37万3,000人で、割合にして59%、非正規の職員・従業員は25万9,000人で41%となっている。
日本全体で見ると、非正規雇用者の割合は1990年ごろには20%程度だったものが、バブル崩壊などを経て、正社員からパートや派遣に切り換える流れが加速した。
そして厚生労働省の発表によると、2022年には非正規社員の割合が36.9%となっている。
ところで、沖縄はもともと非正規の割合が多い土地柄だと指摘する識者もいる。実際、2022年における沖縄県の非正規の割合は全国平均を2.8ポイント上回る39.7%である。
今は多くの人が県外から移住してくるが、沖縄が日本に復帰した1972年ごろはまだ少なかった。
特に求職者は本土で落ちこぼれたり問題を起こしたりしてやって来た流れ者的な人もかなりおり、就職しても会社になにもいわずに本土に帰ってしまったり、なにかやらかしてクビ同然で辞めたりするケースも多かったという。
そのため企業としてもとりあえず非正規で採用して、その後じっくり時間をかけて人柄や能力を見定めざるを得なかった。その慣習が今も残っているというわけだ。
いずれにしても調査データを見る限り、沖縄は非正規の割合が高く、最近になって日本がそれに追いついてきたという印象はぬぐえない。その点からも沖縄に日本の未来像が見えるといっていい。
終身雇用はあたり前ではない
さらに日本の、特に大企業で多かった終身雇用も沖縄では一般的ではない。一因として沖縄の企業はほとんどが中小零細で、定年までいても退職金すら出るかどうかわからないのが現実だ。
年功序列で給料が上がっていき、定年で辞めるときは退職金をもらい年金もあって悠々自適という、一生安泰なケースは沖縄では公務員くらいのものである。
会社にいても将来が保証されないのなら、よりいい待遇や職場環境を求めて転職しようと考えても不思議ではない。そして転職の際はそれまでとはまったく違う仕事に就くこともよくある。
筆者のまわりでもシステム・エンジニアだった人がいつのまにか介護職になっていたり、逆に介護職だった人がカメラマンに転身したり、宅配便のドライバーがお墓の営業マンになっていたりと、めまぐるしい転身ぶりを見せる人がけっこういる。人材の流動化といえばいえなくもないのだけれど…。
そして日本特有の終身雇用制度は崩壊しつつあるといわれている。もともと右肩上がりの経済成長が続いていた時期に、企業が優秀な人材を長期に渡って確保するために導入したのが終身雇用である。
その後のオイルショックやバブル崩壊、リーマンショックなどを経てリストラが一般的になり、非正規雇用への置き換えも進み、終身雇用はあたり前ではなくなった。
大企業が少なく高度経済成長の恩恵もあまり受けなかった沖縄に、日本が追いついてきたという皮肉な見方もできそうだ。
急速なグローバル化が進んでいる
沖縄に万国津梁(ばんこくしんりょう)という言葉がある。
これは「世界の架け橋」という意味で、14世紀から16世紀にかけて、琉球が中国をはじめ日本、朝鮮、東南アジア諸国などと盛んに交易を行い、貿易立国だったころの姿を表している。
つまりはもともと外国との人・物・文化の交流を活発に行っており、鎖国政策を採っていた日本とは対照的にグローバル化が進んでいたのである。
これには地理的な条件も関係している。東京を中心に見れば沖縄は日本の南端に位置する離島である。
しかし沖縄を中心に見れば飛行機で4時間程度の圏内に国内全域はもちろん、ソウル、北京、上海、台北、香港、ハノイ、ホーチミン、バンコク、マニラ、シンガポールまで入る。
つまり、沖縄は東アジアのへそなのだ。市場規模でいうなら日本が1億2,000万人、中国が14億2,000万人、ASEANが6億7,000万人、合計22億人の巨大マーケットの中心に位置しているのである。
これは東アジアでのビジネス展開を考えれば非常に有利な位置にある。
それもあって、沖縄におけるビジネスのグローバル化は確実に進んでいる。
たとえば、イスラム教徒の観光客を見越してハラール商品(イスラム教で食べることが許可された食材と調理法で作られたもの)を開発した土産物メーカーもその一例だ。
いずれにしても沖縄は昔から海外との付き合いで生きる道を切り開いてきたのであり、その意味では日本におけるグローバル化の先頭ランナーといっていいだろう。
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吉田 直人 よしだ なおひと
沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。
著作の紹介
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