【成功する沖縄移住】就職先として有望な業界はこれだ!
若者の人口が多く、全国トップクラスの経済成長率を誇り、さらに本土企業の進出も進む今の沖縄。なかでも元気な業界はIT、観光、製造、食品あたりである。これらの業界で仕事を探すのがいいのは当然だから、その参考にしてもらえるように解説する。
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IT
このところ本土企業の進出が多く、雇用の増大も顕著なのがIT関連産業である。
沖縄に立地したIT関連企業は1990年から2009年まではトータルで202社だったものが、4年後の2013年には300社を突破、2018年には470社、2年後の2020年にはほぼ倍増の900社を超えるほどになっている。
雇用者数も2010年には2万人を突破し、2018年には29,400人、2020年には42,000人まで増加している。
ところでIT企業の一種であるコールセンターは企業数のわりに雇用者数が多いとされている。コールセンターは一社で数百人を雇うこともあるので当然といえば当然だ。
そしてこの業種がIT企業の沖縄進出ラッシュを牽引してきた感がある。
もともと沖縄は若年労働力が豊富だとされてきた。しかも県民性としてホスピタリティが高いともいわれている。
そのため親切な対応ができる若い人材を数多く、それも安く雇用できるという話に惹かれて沖縄に進出した企業もかなりあった。
しかし、人材育成の面からすると以前は十分といえない面もあった。そこで、進出した企業が人材の育成や教育に力を入れたり、沖縄県も施策でそれをサポートしたりという努力がなされてきたのもたしかである。
その結果、持ち前のホスピタリティも合わせて高度な仕事ができるようになり、賃金も高くなってきた面もあるし、業務におけるサポート体制も強化されてきている。
コールセンターの賃金は県内の平均よりも高めに設定されるようになっているのが現状だ。そうしなければ人材が確保できない時代になっているのも事実だが、一方で求職者からすればひとつの狙い目業界であることもたしかだろう。
また、2006年以降は他のIT関連企業の進出も増えている。2006年当時と比べると2015年には情報サービス業が約3倍、コンテンツ制作業が約6倍、ソフトウェア開発業が3倍強と、いずれの業種でも進出企業が激増している。
実は、この裏には沖縄県による積極的なIT企業誘致戦略がある。たとえば沖縄IT津梁パークの整備。この施設はうるま市にあり、沖縄に進出するIT関連企業や研究機関の受け皿となるほか、人材の育成も行われる。
また、こうしたハコモノだけでなく、首都圏や香港、シンガポール等のアジア地域と沖縄を結ぶ海底光ケーブルを高速かつ低価格で利用できるようにしたり、データセンターや県内にクラウドネットワークを整備するなど、インフラ整備にも力を入れている。
さらに通信費の一部を県が補助したり、人材育成を行ったり、税制面での優遇制度を設けたりと、IT企業に対しては行政が至れり尽くせりの施策を行っている。こうした施策もあってIT企業が数多く進出しているのだ。
また、沖縄は日本で唯一、陸路で行けない県なので製造業では物流コストがネックになるが、ITでは通信費をおさえることができれば東京だろうと沖縄だろうと、あまり変わりはない。この点も進出する企業が多い理由だ。もちろん雇用も増えており、転職先としては大変有望といっていい。
観光
コロナ禍中は別として、沖縄を訪れる観光客の数は順調に増えている。それにともなって観光関連業界も活況を呈している。
2018年には観光客数が1000万人に到達し、2020年になると那覇空港の第二滑走路も供用が開始された。
その後、コロナ禍で観光客も一時的に減ったが、2023年ごろからは回復してくるだろう。それに向けて、新しいホテルが続々開業している。
そのためホテル業界は多くの人材を必要としている。さらにホテルだけでなく、観光施設なども似たり寄ったりの状況だ。
ところが沖縄県民は観光業に向かないという説がある。それは人間関係の濃密さが背景にある。盆に正月、運動会に入学式、果ては結婚式に葬式と、あらゆるイベントに参加しようとする。というか、付き合い上参加せざるを得ない。だから仕事を休む。
しかし、そうしたイベントの時期は得てして観光業界のかき入れ時だったりする。上司からは「こんなときに休むな」といわれ「だったら辞めます」となりやすい。
さらにウチナーンチュはホスピタリティはあるが、サービス精神に欠ける面がある。
たとえば商店に入っても「いらっしゃいませ」といわれないことがある。
タクシーに乗ったらラジオから大音量で演歌が流れていて「すみません、ボリューム下げてもらえますか」とお願いしてやっと音を小さくしてもらえたりする。
ウチナーンチュも心根はやさしいのだが、それを表に出すのがあまり得意ではないらしい。
しかし、ホテルスタッフはそうもいかない。性根はろくでなしでも「お客様は神様です」の精神でにこやかに対応しなくてはいけない。
こうしたいわば演技のようなものがウチナーンチュは苦手である。
県民性を考えると、移住者のほうが観光業には向いているかもしれない。
製造業
戦後アメリカ統治が長く続いたことや、本土と陸路でつながっていないために物流コストが高くつくことなどが原因で、沖縄では製造業があまり育ってこなかった。
しかし、ウチナーンチュはもともと素直な性格の人が多く、いわれたことはきちんとこなすので、製造業には向いているといわれてきた。
そのため製造業を盛んにすることは沖縄県民の悲願のひとつでもあった。
近年になって、沖縄が東アジアのへそであることが認識されるようになり、県を主体に製造業の企業誘致に力が入れられるようになっている。
つまり沖縄に工場を建ててもらおうというのである。そこでアジア向けの商品を製造し、輸出すればアジア地域の成長にうまく乗れるというわけだ。
ここで大切なのは商品にメイドインジャパンと表記できることだ。アジアにおけるメイドインジャパンの神通力はまだまだ健在なのである。
そうした工場用の特別なエリアもある。そのひとつが国際物流拠点産業集積地域うるま・沖縄地区というところで、本島中部の太平洋に面したうるま市と沖縄市にまたがる地域にある。
ここには製造業などを対象とした分譲用地のほか、賃貸工場も用意されている。
土地や建物などの取得費用への補助制度も用意されているが、賃貸工場なら初期投資が低くおさえられるうえ、早期の操業も可能になるため、かなり人気のようだ。
また、隣接する形で港も整備されているため、工場からほぼ直接輸出できる環境になっているのも魅力のひとつである。
さらに条件を満たせば工場新設後10年間法人税が40%控除されるという特典もある。
このようにいろいろとメリットがあるため、国際物流拠点産業集積地域うるま・沖縄地区には多くの製造業の会社が進出している。事業内容も多彩だ。作っている商品の例をランダムにあげてみよう。
Tシャツ、水槽用アクリルパネル、パンの缶詰、キャンピング車両、カーボン・セラミックの加工製品、清涼飲料水、釣り具、半導体製造装置向けの流量計、自動車部品、健康食品、家庭用浄水器、地下設置型燃料タンクなどなど。
こうした製造業系企業の進出にともなって、当然ながら雇用も生まれており、沖縄県の担当者によると徐々に人材不足になりつつあるという。
この状況は沖縄の有効求人倍率が1倍を超えたことと軌を一にしていると思われる。また、製造業では新卒者の採用が基本だったのが、これからは中途採用も増えてくると見られる。
食品
沖縄の食品製造業界では、ちょっとした変化が起きている。「ハラール」に対応しようという動きである。
ハラールとは簡単にいえばムスリム(イスラム教徒)が口にすることを許された食事である。
イスラム教の戒律では豚肉を食べてはいけないことになっていて、ハムやソーセージなどの豚肉由来の加工品、豚骨でダシを取ったスープもダメだ。
牛や鶏、羊などでもイスラム法に則った方法で屠殺された肉しか口にできない。さらにアルコールもNGだ。
一方、沖縄に来る外国人観光客は年々増えており、経済発展著しい東南アジアからも多くの人が訪れる。いわゆるASEAN諸国のなかでは特にマレーシアとインドネシアにムスリムが多く、マレーシアでは人口約3 4 0 0 万のうち約6割、インドネシアに至っては人口約2億7,000万のうち約9割がムスリムだ。
筆者は野球の交流で沖縄に来たインドネシア人のムスリムと話したことがある。
歓迎パーティーでバイキング形式の食事が振る舞われたが、彼は「食べられるのはフライドポテトだけ、飲めるのは水だけ」と嘆いていた。
豚肉文化と泡盛文化が幅をきかせるこの島は、ムスリムの観光客にとってはハングリーなリゾートなのである。
彼らには沖縄そばすら出せないことに気づいた沖縄では、ハラールに対応した食事を提供しようという動きがあるわけだ。
それがホテルやレストランから加工業者、お土産用菓子メーカーにまで広がりつつある。ハラールは沖縄の食品業界にとって可能性を秘めた分野といえる。
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吉田 直人 よしだ なおひと
沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。
著作の紹介
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