「汁物」で乗りきろう、沖縄の寒~い冬④
沖縄の汁物が日本の鍋料理と同等、もしくはそれ以上にスグレモノであることをお伝えしているシリーズ。4回目は最終回にふさわしく、豚足、ハリセンボン、そして墨と、ディープな世界を展開する。
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ウチナー合理主義を味わう汁物の最高峰
まずはテビチ汁。日本語に訳すと豚足汁となる。汁物文化が発達しているため、豚の足だろうが牛の尻だろうがウミヘビだろうが、なんでも汁にしているといういいかたもできる。
うまみはもちろん、栄養もじんわりと汁にしみ出てくるので、それをいただこうという発想なのである。
豚足だから脂ギットンギットンだと思うかもしれないが、大きな誤解である。テビチは泡盛と水で6~7時間も煮る。これでよけいな脂が落ちて、とろんとろんなのにあっさりと仕上がる。
その味は、コクがあるのに上品でまろやかだ。骨から出るダシのうまみも効いているのだろう。テビチは煮付けやおでんにも使われるが、主役を張るとなるとやはり汁が一番である。
しかも、あのとろんとろんは脂ではなくてコラーゲンのかたまりなので、美肌や老化防止にも効果がある。コラーゲンが汁にもたっぷりしみ出ているところがテビチ汁の真骨頂なので、反則技かもしれないが、汁だけすすってもその栄養とおいしさの恩恵にあずかれる。
豚の足がこれほどうまくて栄養豊富なのだから、象の足ならその上を行くに違いない。もし沖縄に象がいたら、汁フェチのウチナーンチュは象テビチ汁を編み出していただろう。
象足の輪切りを泡盛で10時間煮込み、皮がフニャフニャになったら、さらに昆布と大根といっしょにカツオのダシ汁で煮てできあがりだ。
これは夏のビーチにあふれる象のような足のナイチャーおねーさんたちへのあてこすりでは、決してない。
肝の入ったハリセンボン汁は意外な高級料理
アバサー汁のお話。アバサーはハリセンボンのこと。ハリセンボンは角野卓造と死神の女性漫才ユニットではなく、トゲをたくさん持ったフグの仲間だ。したがってアバサー汁は、魚汁の一種である。ちなみにこのフグに毒はない。
アバサー汁の作り方は基本的に魚汁と同じ。皮をはぎ、アクを取りながらしばらく煮て、みそで味つけする。
違うのは肝を入れること。あん肝に匹敵するほどうまいとされるアバ肝でアバサー汁独特のコクを出す。アバ肝は、泡盛とみそといっしょに手でもみ、ドロドロになった状態で鍋に入れる。
ただ、皮をはいだりするのがめんどいので、料理店で食べることが多い。でもけっこう高い。ウチナーンチュにとっては高級料理なのである。
更年期障害や高血圧によるのぼせを下げる効果もあるとされ、薬膳料理としても扱われるので、ちょっと高めなのかもしれない。
もし自分で作りたいなら、那覇の公設市場などで皮をむいたアバサーが売られているので、それを買うのがいい。皮をむかれたアバサーは目がぎょろりとしていて、愛嬌のある顔をしているので、笑える。
女性漫才ユニットにコイツが加われば、大人気になることは間違いない。ダイバーの中にはふだん海中で仲よくしているので、食べられない人もいるという。
昔、みのもんたがクイズ番組で回答者に「ファイナルアバサー?」と質問していた。筆者の聞き違いだろうか。
唇もウ〇コも黒光りさせるブラックフードのパイオニア
最後はイカスミ汁。沖縄の郷土料理のひとつで、イタリア人がパスタにイカスミをぶちこむはるか以前から、ウチナーンチュはイカスミを料理に使っていたのである(たぶん)。
日本でも最近はブラックフードなるものが人気のようだが、その先べんをつけたのがウチナーンチュなのである(おそらく)。
材料は白イカに豚肉、ニンジン、にがななど。カツオや昆布のダシとイカスミのコラボは濃厚でコクがあり、しかもあっさりしていて、とりこになることうけあいだ。
自分でも作れるが、白イカはスミ袋を取るのがむずかしい。スミが服につくとなかなか落ちないので、誤ってスミ袋を破り、中身が飛び散ったら悲惨なことになる。
だから、さばくのはプロにまかせよう。めんどかったら琉球料理店に行くのが一番だ。
イカスミには整腸や血圧を下げる作用があるので、昔から薬膳料理の一種とされてきた。ガン予防にも効果があるといわれる。また、白イカは下げ薬といって、便通を促す作用もあるそうで、便秘で悩む女性にもおすすめだ。
ただし、食べたあとは、お約束のお歯黒状態になるので、ご注意を。あとウンコも黒くなるので、こちらにもご注意を。ま、普通は他人に見られるものじゃないからいいけどね。
イカスミ人気の高まりで悪のりして、イカスミサーターアンダギーとか、イカスミアイスクリンとか、イカスミオリオンビール(黒ビールの向こうを張って)とか、イカスミかりゆしウェア(葬式用)とか出てきそうだなぁ。
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吉田 直人 よしだ なおひと
沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。
著作の紹介
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