2023/02/20

【成功する沖縄移住】移住者の住まい探しは、進化する「ゆいレール」沿線を狙おう!

戦後50年以上、沖縄には鉄道がなかった。それが21世紀に入ってやっとできた。それがモノレールである。そのモノレールが近年いろいろと進化を遂げている。地元民はもちろん、移住者の足としてどのくらいのパフォーマンスを持っているのか、考えてみたい。

 

建設費返済は毎年1億円でも1000年以上かかる

沖縄都市モノレール、通称「ゆいレール」は戦後初の鉄軌道として2003年に開業。那覇空港駅-首里駅間12.9キロを27分ほどで結んでいた。

この区間の建設費は1128億円もかかったそうである。それを返済するとしたら、毎年黒字を計上して1億円ずつ返したとしても1128年かかるのである。もちろん無利息でだ。

だから最初っから採算を度外視しているようにも思える。長い間米軍に統治されて国鉄の恩恵を受けられなかった沖縄への、おわびの象徴として与えたのがモノレール、とも見えるのである。

 

沖縄唯一の電車だが実用性はイマイチだった

ただ、ばく大な税金が投入されているわりに利便性はイマイチだと筆者などは考えていた。

途中、県庁前や国際通りのある牧志を通るので、那覇市の中心部に用のある人や観光客にとっては便利な交通機関であるが、筆者など那覇市以外に住む人にはあまり使えないシロモノだった。

なんだか中途半端な乗り物だなぁというのが正直なとらえ方だったのである。

2両編成のゆいレール。ハンパな乗り物だと思っていたが、延伸したり3両に増えたりと進化中だ。それなら、ハンパなどという言葉を撤回したい。

 

運転士はがんばっているがオバァは手を上げる

ちなみに、ゆいレールには車掌が乗っていない。ドアの開閉も運転士が行う。

運転中は座っていて、駅に停車すると立ち上がってドアを開閉し、安全確認をしたら再度座って運転する。

けっこうな重労働だ。ゆいレールの存在意義や実用性、事業性は今ひとつわからなかったが、少なくとも運転士がコスト削減のためがんばっているのはわかった。

開業後しばらくして、筆者が実際に目撃した光景だが、電車が入線してくるとき、ホームにいたオバァが電車に向かって手を上げた

筆者は当初、オバァは運転士と知り合いなのかと思った。孫とか。しかし、運転士は無反応だし、オバァは後ろの車両に乗って座席に腰を下ろす。知り合いっぽくない。

ここで筆者はひらめいた。オバァはモノレールとバスを混同しているのだ。

最近はバス停に立っていれば、バスは停まってくれるが、昔は手を上げないと通過した。だからオバァは電車に停まってもらうために手を上げたのである。

ゆいレールがまだ地元民の交通機関として定着していない証拠だと思っていた。

 

黒字化と延伸で進化に勢いがつく

それが、少し状況が変わってきた。まず、2015年度に単年度の黒字化を実現したのである。観光客や地元住民の足として定着してきた結果といえるだろう。

さらに2019年には延伸も果たした。それまで終点だった首里駅から、てだこ浦西駅までの4.1kmが開業したのである。

その区間には石嶺、経塚、浦添前田の各駅も新設された。つまり、ゆいレールは筆者の住む浦添市まで延びたのである。これなら多少は使えるかもしれない。

 

高速道路との接続で中北部在住者にもメリット

さらに、てだこ浦西駅は沖縄自動車道と接続するため、たとえば中北部方面から高速道路を車やバスできて、ゆいレールに乗り換えて那覇市内に通勤という、いわゆるパーク&モノライドも可能になるという。

そのために、てだこ浦西駅周辺に沖縄自動車道のスマート・インターチェンジ(スマートIC)や高速バスターミナル、パーク&モノライド用の駐車場などの整備も進んでいる。

こうした構想が実現すれば、車やバスによる高速移動と定時運行を組み合わせた効率的な移動が可能になるため、本島中部からはもちろん、名護あたりからの那覇への通勤も一般的になるかもしれない。

 

利便性の向上で移住者の住まい候補にも

すると非常に便利になる。あまり使えなかったゆいレールが、バリバリ使えるようになるかもしれない。そうなればばく大な税金投入も多少は許せるというものだ。

そして、移住者が住まいを探す際にも、ゆいレール沿線は有力候補となるだろう。電車で通勤できるとなれば、場合によっては車を所有しなくて済むかもしれないし、飲んだ後の帰りの心配もなくなる。

もちろん、定時制も確保されて安心だ。いつ来るかわからないバスを待つよりはるかにいい。

 

利用者増加で2両から3両編成へ

さらに大きな動きがある。編成を2両から3両に増やす話である。筆者はそもそも、ゆいレールをおもちゃのように思っていたが、それが少し変わりそうなのだ。

ゆいレールは、計画段階では4両編成で走らせる予定だった。それは1日の利用者数を7万人と想定した上であった。

ところがその後、利用者数の想定が減っていき、最終的に2万5000人になった。それに合わせる形で駅の構造を3両対応とし、まず2両編成で走らせることにしたのである。

それが、延伸効果などもあって利用者が増え通勤時間帯の混雑が課題になったため、3両化することになったのである。

3両になったゆいレールは、2023年2月上旬から試運転が始まった。そして2023年度中に本格運行が始まる予定だという。

というわけで、ゆいレールは進化を遂げており、沖縄における公共交通機関としての地位を着実にしつつある。

ただ、もっと長距離の鉄軌道はどうするのだろう。たとえば那覇-名護間に新幹線を走らせるとか。時速300kmなら両市間を15分で結べる。

これなら通勤にも使えるので実用性はばっちりだ。飲酒運転も減るだろう。しかし、採算が取れないだろうから、実現は1000年かかっても無理だろう。

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吉田 直人 よしだ なおひと

沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。

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