2023/03/16

【成功する沖縄移住】ベトナム製まで出ている伝統工芸「琉球ガラス」

前回泡盛について書いたので、そのつながりで琉球ガラスのお話をしてみたい。もちろん琉球ガラスのグラスで泡盛を飲もうという発想だ。切っても切れない縁ともいえる。

 

誕生は明治で華開いたのは戦後

琉球ガラスとは琉球伝統のガラス製品、だと思ったらちょっと違う。

もともと明治期から作られていたのはたしかで、その意味では伝統製品である。ただ、それが工芸品として開花したのは戦後なのだ。

 

廃ビンを利用したアメリカ人向けお土産用で発展

米軍基地から流れてくるコーラ、ビール、ジュースなどの廃ビンを材料として始まったもので、当初はワイングラス、シャンパングラス、サラダボウル、ガラスの造花などを、アメリカ軍人向けのお土産用として作っていた。

アメリカ製のコーラやビールなどのビンの色がそのまま出るのも、彼らに好まれた理由かもしれない。コカコーラのビンで作ると薄いブルーに、ビールビンだと茶色に、セブンアップなら緑色の作品になったのである。

その結果、製品の6割がアメリカに、2割が日本本土に輸出され、残りの2割も沖縄在住のアメリカ人が買っていたといわれる。原料も客もアメリカで、米軍御用達みたいな位置づけだったのだ。

 

海洋博をきっかけに日本人にも認められる

このように1970年代半ばまではアメリカ人相手がメインだったが、1975年の沖縄国際海洋博覧会をきっかけに日本人観光客が増加し、それに合わせるように琉球ガラスが観光土産として脚光を浴び始める。日本人もそのよさを認めるようになったのだ。

材料も廃ビンから脱却し、色のバリエーションもほぼ無限になった。さらに、泡ガラスという、独創的な作品も生み出される。実用品から工芸品へ進化し、そして芸術品へと昇華したのである。

昔は廃ビンの色だったが、現在ではあらゆる色彩表現が可能となっているから、沖縄の自然や文化を表現することもできる。

 

琉球伝統の工芸品がグローバル化した

ところが20世紀の終わりごろ、琉球ガラス業界にちょっとした問題が起きた。某メーカーがベトナムでの生産を始めたのだ。

沖縄の職人が現地に常駐して技術指導しているとはいうが、ベトナムで作った製品を琉球ガラスとして売っていいのか、とモメたのである。

それなら、中国製沖縄そば、マレーシア製壺屋焼、北朝鮮製かりゆしウェアもOKだろうか。

でもメキシコ製泡盛というのがあれば飲んでみたい気もする。ちょっとテキーラ風味だったりして。

モンゴル産横綱がいるのだから、ベトナム産琉球ガラスでメキシコ産泡盛を飲んだって、いいんじゃないのか。それもグローバリズムもひとつだろう。

一覧に戻る

同じカテゴリーの人気記事

2024/10/24

【成功する沖縄移住】秋は空手で沖縄文化の真髄に触れよう

スポーツの秋である。文化の秋でもある。両方へいっぺんに身を浸す方法がある。空手をたしなむことだ。沖縄空手は琉球文化の真髄も包含していることを理解しながら達人を目指そう! &n……

2024/08/22

【成功する沖縄移住】南極も砂漠もへっちゃら!琉球漆器のすごさ...

きわめて高い技術で作られながらも存在がやや地味で、意外に注目されない伝統工芸の漆器。お盆で重箱を見て琉球漆器のすごさを思い出したので、紹介してみたい。   食器だ……

2024/07/18

【成功する沖縄移住】「パーにサンバ?」小粒な伝統打楽器がおも...

エイサーや琉球舞踊などの伝統芸能では三線が大きな役割を果たすが、打楽器も欠かせない。大きな太鼓だけでなく、小さな打楽器も音楽の根底を支えている。今回はこうした小粒な伝統打楽器を紹介……

人気の記事 (note)

承ります 承ります
  • ・本サイトへの広告掲載のご依頼
  • ・執筆のご依頼
  • ・その他お問い合わせ

吉田 直人 よしだ なおひと

沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。

著作の紹介

移住者のための沖縄仕事NAVI

沖縄で仕事を探す! 移住者のための沖縄仕事NAVI

沖縄移住を成功させるカギ、それは仕事だ! 沖縄における就職事情と、仕事をゲットするコツを伝授。

金なし、コネなし、沖縄暮らし!

沖縄移住のバイブル! 金なし、コネなし、沖縄暮らし!

暮らしも遊びも人付き合いも、生活のすべてを網羅した面白本。ウチナーンチュが本音で語る沖縄暮らしの真実。

沖縄移住ガイド 住まい・職探しから教育まで実用情報満載!

沖縄暮らしのAtoZ 沖縄移住ガイド 住まい・職探しから教育まで実用情報満載!

どこに住むか、どう働くか、子どもの教育をどうするか・・・客観的視点から生活の実際を紹介する実用ガイド。

沖縄のことわざ

あとぅまさい かふう残り物には福がある