【成功する沖縄移住】わが家にトートーメーがやってくる!その②
「トートーメーってなに?」というお話の2回目。今回はトートーメーがどこから来たのかという過去の話、そしてそれがはらむ現代的な問題について考えてみる。
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沖縄で広まるまでの経緯
前回の記事で、位牌を祀る風習は儒教を起源として、中国、韓国、日本で行われてきたと紹介した。
そして、位牌の一種であるトートーメーがどのように沖縄に伝わったかについては主にふたつの説がある。
まず、中国福建省から直接伝来したというもので、トートーメーは福建省から沖縄に移住した中国系住民(旧久米村の人々)を通じて伝わったとされる。
もうひとつの説では、中国からいったん日本に伝わり、臨済宗(禅宗の一派)を通じて本土から沖縄に伝来したという。
本土と共通する位牌の祀り方が多いため、日本経由の説が自然であると考えられているらしい。
また、トートーメーを通じたご先祖様供養の習慣が見られるようになったのは、17世紀末ごろからである。
まず、那覇や首里の士族階級の間で位牌を用いた供養が始まり、徐々に平民の間にも広がっていった。
しかし、地域によって伝播の速度には差があった。たとえば、国頭地域では大正時代、宮古島の池間島では昭和、糸満市の一部では戦後になってようやく広まったとされる。
位牌を拝む習慣が沖縄全域に定着するまでに、少なくとも200年以上の時間を要したことになる。
さらに、身分によっても普及のスピードに違いがあった。役人の家では早い段階でトートーメーが取り入れられた一方で、農民の家では比較的遅かったという研究結果もある。
最も広がりを見せたのは明治時代であり、沖縄でトートーメーが本格的に定着したのは、100年から150年ほど前のことである。
継承にまつわるタブー
トートーメーはご先祖様を供養するための重要な存在であるが、継承に関していくつかのタブーがある。代表的なものは以下の通り。
①長男以外が継いではいけない
②女性が継いではいけない
③兄弟の位牌を一つの仏壇に並べてはいけない
④父系血族以外の血筋が入ってはいけない
上記のうち④については、他家から迎えた養子などに位牌を継がせてはいけないという意味である。
継承をめぐるトラブル
トートーメーの継承における最も大きな問題は、財産との関係である。
沖縄ではトートーメーを継いだ者が全財産を相続する習慣があるため、これが原因でトラブルや裁判に発展するケースがある。
法律上、兄弟であれば相続権は平等であり、性別も関係がない。しかし、トートーメーの継承者が財産をすべて相続するという習慣が、争いの火種となる場合がある。
たとえば、長男が県外で好き勝手に暮らし、親の世話や行事への参加をまったくしない一方で、次男が親の面倒を見て畑仕事を手伝っていた場合でも、長男が「自分がトートーメーを継ぐから財産も自分のものだ」と主張することがある。
こうした場合、他の兄弟が納得できず、トラブルが起きるのである。
トートーメーを継ぐことは、年中行事や費用などの負担も伴う。そのため、負担を担う者に財産を継がせるという意図がある。
しかし、財産が少ない場合、負担だけが押し付けられることになり、長男が位牌の継承を嫌がるケースもある。
さらに、女性がトートーメーを継ぐことが禁じられるため、財産の相続からも排除されることが問題視されている。
女が財産を継げないのは違法ではないか?
トートーメーは天皇家みたいなもの、という話がある。男しか継げないからだ。
これについて「女が財産を継げないのは違法ではないか」というわけで裁判ざたになったこともあるし、新聞紙上で大論争にもなった。
男性優位の発想なので、女性が怒るのも無理はない。従来のしきたりでいえば、たとえば父ちゃんが死んだが、子どもが女ばかりでトートーメーを継げない。
それで、近親の男の子を探したら、死んだ父ちゃんに愛人がいて隠し子もいることが判明。
それが男の子で、彼がめでたく全財産を継いだ、などということもありえる。
昔は側室の子が天皇を継ぐのも普通だったので、やはりトートーメーと天皇家には共通点があるようだ。
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吉田 直人 よしだ なおひと
沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。
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