2024/03/14

【成功する沖縄移住】見ず知らずの母娘のチムグクルに感動した話

ウチナーンチュのチムグクル(心・精神)を感じさせるできごとに遭遇した。小さな親切かもしれないが、大きな感動を得たので紹介したい。

 

なに、財布入りバッグがないだと?

先日、浦添市にあるショッピングモール・サンエーパルコシティへ、夫婦で買い物に行った。

お買い物作戦を立てるために、エントランスを入ったところにあるベンチにいったん腰を下ろし、しばし話を交わす。

数分後立ち上がり、上階へ向かった。

ユニクロでの買い物だけで30~40分かかった。やっと妻がレジへ行き、支払いをしようとしたときだった。

バッグがない!」と、まわりが引くくらいの大声が響いた。

見れば、妻の肩にかかっているはずのバッグがない。幅が50cm以上あるデカめタイプなので、体の死角に入って見えないわけでもない。本当にない

「全財産が入っているのに、どこに忘れたのかしら」と妻がわめく。来るときの車内で抱いているのを見たので、家に忘れたはずはない。

「一階のベンチだわ」と妻がいう。それで得心した。お買い物作戦のために座っていたベンチに忘れたのだ。

もちろん夫婦で焦った。現金やクレジットカード、キャッシュカードなどが詰まった財布も入っている。それを30分以上も放置していたのだ。

サンエー・パルコシティは県内では「イオンモール沖縄ライカム」に次ぐ規模を誇る。

 

このあたりのベンチに妻がバッグを置き忘れた。母娘は、その右手にある大阪王将から出てきたという。

 

親子連れの間に見覚えのあるバッグが

エスカレーターを走り降りて一階のベンチに戻る。手前10mくらいから見覚えのあるバッグを認識した。

あったぞ」と後ろからすがってきた妻に伝えた。しかし、ベンチに近づくと不思議な気がした。

そこには高校生くらいの女の子と母親らしき女性が座り、その間の狭い空間に妻のバッグが鎮座している。まるで母娘の持ち物でもあるかのように

妻も怪訝そうな顔をしていたが、思いきったように親子に声をかけた。「あのう、そのバッグ・・・」

すると母親が笑顔になり、うれしそうな声を上げた。「このバッグ、おたくの? ああよかった!

娘の方もニッコリしながら「だからよ~」とうなずく。

「わたしたちさ~」と母親が説明を始める。「そこのおーしょー(大阪王将)でギョーザ食べて出てきたらよ、このバッグがひとりで座っているわけよ」

なるほど、この母娘がバッグを見つけてくれたのだとわかる。

「忘れ物なのはわかったから、そこのいんふぉめーしょんかうんたーとかに届けようとしたわけよ」

なんだ、それでいいじゃないか、すばらしい対応だ。

「でも娘がいうわけよ。忘れた人はあちこち探し回ってねーらんねーらん(ないない)いいながら、結局かうんたーに行って、中身はなにかとか名前いえとか、どーこーあびられてからやっと返してもらえるわけさ~」

それはそうだ。店側としては、預かった忘れ物を違う人に返してしまったら後でトラブルになるから、本当の持ち主かどうか、しつこく確認する。

めんどくさいですよね~」と、娘がいう。たしかにめんどくさい。しかし、それはそっちではなく、こっちの問題だ。

で?

 

「待ってようよ」って娘がいったらしい

「だからさ~、忘れた人は戻ってくるはずだから、ここで見張りながら待ってようって、娘がいうわけよ」

思わず妻と顔を見合わせた。「どのくらい待ってたんですか」と妻が聞く。

「30分くらいかね」と母親。娘もうなずく。

この母娘は、私たちがベンチを立った直後からバッグを守りながらここで待っていたのだ。

「1時間待ってだれも来なかったら、かうんたーに届けようって、娘とゆってたわけよ、あはは、あんしねーやー(じゃね)」といいながら、母娘はバッグを残し、帰っていった。

私たち夫婦は、母娘の名前を聞くことも思い浮かばず、その後ろ姿に無言で頭を下げるばかりだった。

移住者や移住希望者のみなさん。ウチナーンチュはある意味恐ろしい。なめてはいけません。

 

サンエー・パルコはちょっとしたリゾート

ところで、筆者夫婦がこの母娘に出会ったショッピングモールは、正確にはサンエー浦添西海岸PARCO CITYという。名前の通り、沖縄のサンエーと本土のパルコの合弁だ。

オープンは2019年。米軍基地の沖を埋め立てた場所にあり、地元民にとっても比較的新しいスポットである。

東シナ海に面していて景色はすばらしく、買い物ついでに砂浜や磯を散策することもできる。そのため、観光客も多い。ちょっとしたリゾートである。

筆者は家族で来たとき、妻たちの買い物の間海岸沿いをウォーキングするのが楽しみである。

おすすめスポットなので、ぜひ訪れていただきたい。忘れ物に気をつけて。

店の前の道路も比較的新しく、これが通ったおかげで空港からのアクセスも便利。

 

干潮時には目の前の海で磯歩きも楽しめる。ブルーがきれいな、体長3cmほどの熱帯魚が潮だまりで泳いでいるのがわかる。

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吉田 直人 よしだ なおひと

沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。

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