2023/04/07

【成功する沖縄移住】墓参りか行楽か「シーミー」って、なに?

おとといの4月5日は、二十四節気のひとつである清明だった。この日以降5月のゴールデンウイークのころまで、特に沖縄本島ではシーミーの季節となる。本土ではあまり見られないが、沖縄では重要な行事で、移住者が地域社会や姻戚一族に溶け込むためにはその理解や参加はとても大切だ。そこでサラッと勉強してみよう。

 

中国から入ってきた先祖供養の行事

沖縄には、初夏に一族郎党がそろってお墓に行く習慣がある。

シーミーと呼ばれるこれ、単なる墓参りではない。飲んで食べて笑いに包まれる、大宴会になるのが普通だ。

シーミーは正式には清明祭といい、中国から入ってきた先祖供養の習わし。旧暦の3月、今の暦なら4月の吉日に行われることになっている。

とはいえ、現実的な問題からみんなが集まりやすい休日に行われることが多い。

大規模な墓地になると、シーミーで訪れた人たちの車で渋滞することもあるし、それを見越して路線バスがルートを変更するケースもある。

特に2023年は、かなりの人出が予想される。その前の3年間がコロナ禍のせいでシーミー自粛ムードが濃く、それがなくなった反動で久しぶりの開催機運が盛り上がっているからだ。

一族郎党が集まり、お墓の前でご先祖様にごちそうを供え、ご相伴にあずかりながら宴会するのがシーミー。

 

第一に必要なのはくゎっちー

シーミー開催の必須アイテムの第一はくわっちー、つまりごちそうだ。

豚肉の煮付け、昆布巻き、揚げ豆腐、てんぷら、かまぼこなど、沖縄ならではの行事用料理をお重に詰めて持っていく。

ただ、これらの食べ物は年寄りにとってはごちそうかもしれないが、今の若い人たちからするとそれほどではない。ふだん食べているものの方がごちそうだったりする。

貧しい時代には、ごちそうが食べられるというので子どもたちも積極的に参加したが、今はシーミーに行くのをいやがるお子ちゃまが増えているらしい。家でゲームをしている方が楽しいのである。

くゎっちーというのは、こうした重箱料理のこと。これを持ってお墓に行き、ご先祖様にお供えするのが基本(©OCVB)

 

第二にブルーシートやテント、草刈り機

必須アイテムの第二はブルーシート。みんなが座れるように敷くためだ。テントを持っていくこともある。お墓が広くて参加者が多いケースでは有効だ。万一雨が降っても対応できるし。

さらに草刈り機が必要なこともある。お墓やそのまわりにびっしり雑草が生えていたりすると、シーミーを始める前に草を刈らなければならないのである。

 

実態はみんなでお墓へピクニック

以上を車に積み、ついでにオジィやオバァや子どもたちも積みこむと出発準備完了。このあたりでピクニック気分が盛り上がり始める。

お墓に着いたら、草刈り、掃除をしてブルーシートを敷いていると、親戚連中も次々と到着。

準備ができたら墓前で手を合わせ、次いで宴会に突入する。もちろん酒が入ることもある。

 

ご先祖様と生きている人の交流の場だったりもする

親戚が久しぶりに集まるのなら、さらに話が弾み、ご先祖の霊も参加して楽しむのである。

しかも、「うりずん」と呼ばれる季節で、うっとうしい梅雨も猛暑の夏もまだ先の過ごしやすい時期だから、屋外の宴会は気持ちがいい。

まるで、ご先祖様と生きている人たちが楽しく交流しているようにも見受けられる。

また、そこには、お墓は怖いところ、忌み嫌うべき場所などといった雰囲気は少しも感じられず、逆に「お墓っていいところだなぁ」と思うことすらあるというのは、考えすぎだろうか

 

お墓にUber Eatsが来るか

ところで、ごちそうに対する意識が変わっていることにも関連するが、近年よく聞く話としてピザの配達を頼む場合があるという。

ごちそうを自分で作らずに、スーパーなどで買うケースはよく聞くが、お墓にピザの宅配というのはいかがなものだろう。

今年あたりはさらに進んで、お墓にUber Eats(ウーバーイーツ)が配達に来るかもしれない。

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吉田 直人 よしだ なおひと

沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。

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