商売としての「沖縄そば」考③
沖縄県民が大好きな沖縄そばを、商売の観点から考えるシリーズ。前回はソーキそばで、今回は牛肉そばを取り上げる。どちらも、沖縄そばの単なる派生型ではなく、ひとつのスタイルを確立し、専門店が繁盛しているという観点でセレクトした。
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牛肉もやし炒めと沖縄そばの意外な組み合わせ
牛汁にそばを入れた牛そばがあるが、ここで取り上げるのはまったく別のもので牛肉そばという。沖縄そばの新しいスタイルである。
牛肉そばは、本島北部大宜味村の前田食堂の看板メニューだ。ここのは、沖縄そばに牛肉もやし炒めをトッピングし、これでもかと黒コショウを効かせたものである。
とにかくボリュームがハンパではない。そばという名前なのに、そばはまったく見えない。牛肉もやし炒めが山のようにのっかっているからで、まるでもやしでできた東京ドームである。
独創的なアイディアが大当たり
そばが琉球、牛肉もやし炒めが中華、コショウが洋なら、琉中洋のコラボが生んだ不思議な逸品、ということになる。
店主がそこまで意識したかどうかはわからないが、このアイディアが沖縄そばの世界に画期的なニューモデルを生んだことはたしかである。
これが評判を呼び、地元民も観光客も大勢が店を訪れ、お昼時は行列ができることもあるほどだ。かなり儲けていると思われる。
食べ方も普通の沖縄そばとは違う
食べるときにはまず、牛肉もやし炒めの山を半分ぐらい食べて、隠し味のにんにくとバター、それに黒コショウのコンビネーションパンチをたっぶり浴びる。その後、麺をすすり、汁を味わう。
野菜そばと同様、牛肉そばの真骨頂は、この汁にある。もやしのエキス、牛の肉汁、バターの甘味、黒コショウの辛み、それに豚ダシベースの汁が渾然一体となった豊かな風味。
これが、ときどき夢の中でおいでおいでをするので、思わず大宜味に向かってしまうのだ。ただし、人によって好き嫌いが分かれるとは思う。
伝統の上に進化の道を探ったことが成功の要因
牛肉そばが成功したのは、もちろんトッピングのアイディアがよかったからである。だから応用はいくらでも可能だ。パパヤーチャンプルーをのせたパパヤーそばなんて、すぐにもできそうだ。
それはともかく、ソーキそばにもいえるが、伝統を大切にしながらも進化の道を探っていくことが、そばの世界で抜きん出る秘訣なのは明らかである。
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吉田 直人 よしだ なおひと
沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。
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