2023/09/21

【成功する沖縄移住】アメリカ大統領が絶賛した「石垣牛」を試してみて

ウチナーンチュは酒のあとのシメにステーキを食べるという話が全国区になっている。アメリカ文化の影響もあって沖縄県民はステーキ好きだが、近年はブランド牛も増えている。山城だの本部だの伊江だのいろいろあるが、もっとも有名なのは石垣牛だろう。今回はオキナワン・トップ・ビーフ・ブランドのお話を。

昔はお役ご免の牛を食用にしていた

石垣牛とは、石垣で育った牛である。こう書いてしまうとミもフタもないので、もう少しちゃんと定義すると、八重山地域で生まれ、20ヶ月以上そこで育てられたメス牛か去勢されたオス牛のこと、となる。この黒毛和牛の処女がうまいのだ。

昔、西表島の1泊2食付き6000円の民宿に泊まったとき、仲間由紀恵の顔ほどの大きさの石垣牛ステーキが夕食に出てきたことがある。

驚いた筆者が「こんなでかいステーキ出して採算取れるんですか」と主に聞いたら、「ハイギューだからいいわけさ」といわれた。

ハイギューとは、なにかの病気か、筆者の知らない動物かと思ったがそうではない。もちろんハイチューでもない。廃牛と書き、要するに繁殖用だったが子供が産めなくなって屠殺された牛なのである。ちなみに乳が出なくなった年寄りの乳用牛も廃牛というらしい。

役に立たなくなって処分された牛なので安い。だから民宿の夕食に出せるのだと、主はいったわけだ。昔の石垣牛は、その程度の位置づけだったともいえる。

 

今は子どものころから肉用に育てられる

しかし、今は違う。現在の石垣牛は、生まれたときから肉用に大切に育てられた牛をいう。エサにも大変気を使い、トウモロコシ、麦、大豆などの厳選素材を絶妙にブレンドした飼料を与える。

だから、石垣島を旅してよく見かける、広々とした牧場でのんびりと草をはむ牛たちは、石垣の牛ではあるもの、実はブランドの石垣牛とは限らない。

そもそも八重山地域は畜産が盛んである。黒島などは、人間より牛が多いくらいだ。ただ、それらの牛は肉用というより、子牛を生むのが一番大きな役割だった。生まれた子牛は、日本中に出荷され、一部は松坂牛や神戸牛などの超有名ブランド牛となる。

つまり、日本人は八重山生まれの松阪牛や神戸牛を食べているのである。だから、八重山はもともと子牛の産地だったのだ。

 

サミットで大統領に絶賛されて全国区に

それが、2000年に開催された沖縄サミットを機に大きく変わった。集った各国首脳の晩餐会に石垣牛が出され、それが彼らに絶賛されたのである。

ちなみに、サミット出席者は、当時の森首相、クリントン大統領、ブレア首相、プーチン大統領、シラク首相、シュレーダー首相などだった。特にクリントンさんは、べたぼめだったと伝えられる。

これによって、石垣牛の名は日本中に轟いた。それまで、松坂牛や神戸牛のための、いわば裏方だった石垣牛がブランド牛として表舞台に登場したのである。

しかし考えてみれば、石垣の緑豊かな大地で、サンゴ礁の海から渡ってくるやさしい風に吹かれながら、愛情に包まれて育ったのだから、その肉がマズイわけがない。彼らの生活環境は、東京であくせく暮らす人間よりはるかにいいのだから。

味的には、特に霜降りがうまいといわれる。この脂、いわゆるサシに濃厚なコクと甘味があり、にもかかわらずさっぱりしていて、どんどん食べれてしまう。当然、さしみ、石焼き、ステーキ、すきやきと、どんな料理でもばっちりだ。

石垣牛は満員電車に詰め込まれないし、人間関係で悩まないし、都会のサラリーマンよりいい暮らしをしている。

 

生産量が少ないのがネックではあるが・・・

筆者は、石垣島の居酒屋で食べた握りが忘れられない。石垣牛丼を出す店もあるというが、そんなぜいたくなことをしていいのかと思っていたら、石垣牛ハンバーグや石垣ビーフカレーを出す店もあるらしい。

ただ、もともと生産量が少ないので、なかなか手に入らない。でも、そのせいで人気が高まった面もあるという。値段も人気に比例して、なかなかのものである。しかし、どうしても食べたいというならネット通販を利用するのがおすすめ。沖縄の肉屋も、何軒かネット通販をやっている。

しかし、食品偽装もよくある話だから、石垣牛のステーキ肉とうたいながら実はテキサス産バッファローだった、なんてこともあるかもしれない。そこが悩みの種だ。

こうなったら石垣島まで行って、一頭まるごと買い、牛汁にして食っちまおうかと思っている。焼き肉やステーキなど、ありふれていてつまらない。石垣牛のヒレの牛汁、というのが筆者の夢なのだ。

柔らかくて脂もさっぱりな石垣牛は、握りでもうまい。鮮度の良さもあるのではないか。輸入牛肉を握りで食べるという話は聞いたことがないし。

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吉田 直人 よしだ なおひと

沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。

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