2024/09/27

【成功する沖縄移住】米軍基地内にお墓がある?自由に墓参りできない問題

先日は、春のお彼岸だった。沖縄でもお彼岸に墓参りする人はそれなりにいる。だが、自由にお墓に行けない人もいる。理由のひとつとして、お墓が米軍基地の中にあるケースだ。今回は米軍基地にまつわるお墓の問題について考えてみたい。

 

強制接収された軍用地にはお墓も

1945年の沖縄戦の際には、海に浮かんだ戦艦からの艦砲射撃や航空機からの爆撃、地上での戦車などによる攻撃にさらされ、地形すら変わるというほどのいわゆる鉄の暴風が吹き荒れた。沖縄では約20万人が亡くなり、県民の4人にひとりが犠牲になったといわれる。
何とか生き残った人々の多くは収容所に収容されており、その間に米軍は広大な土地を軍用地として接収していた。
もちろん土地の所有者に許可を得ることなどなく、補償金や地代を払うこともなく、私有地を勝手に没収して基地として利用し始めたのである。
さらに1950年に勃発した朝鮮戦争によって、沖縄の米軍基地の役割がさらに重要になり、米軍側は恒久的な基地の建設を始めた。
そのために、新たな土地の接収が強制的に行われたのである。これらのなかには、当然墓地も含まれていた

普天間基地の誘導灯の脇に立派な亀甲墓が存在する。非常にアンバランスで違和感のある風景だ。

 

オスプレイが最終進入する脇に亀甲墓が

2010年の宜野湾市の調査報告によると、普天間基地内に500筆あまりのお墓があるという。これで、米軍基地として強制的に取り上げられた土地のなかには、現在もお墓が存在することがはっきりわかる。
たとえば普天間基地の滑走路の南側誘導路の脇には、沖縄伝統の亀甲墓が見られる。オスプレイなどが着陸するそのそばにお墓があるという、基地とお墓問題の象徴的な光景が見られるわけだ。
2012年8月から3年間、在沖アメリカ総領事を務めたアルフレッド・マグルビーさんという人は就任会見で「なぜ基地の周辺に住宅が密集しているのか不思議だ」と発言して県民の怒りを買った。
この発言の裏には、まず基地があって、そのまわりに勝手に住宅が建てられたという根本的な考え違いがある。
その論法でいくなら、普天間基地内の亀甲墓は基地ができた後に建立されたことになる。明らかにおかしな話だとわかる。

普天間基地内には500筆以上の墓地があるそうで、基地の中に墓地があるというより、墓地の中に基地があるといいたくなる。

 

基地内でお墓参りができるのか

では、基地内にあるお墓にお参りすることはできるのか。結論からいうと、できる。ただし、米軍の許可が必要だ。自分のご先祖様のお墓参りをするのに、許可が必要というのも変な話である。
たとえば沖縄市の人なら立ち入り許可の申請書に身分証明書、さらに車で入る場合は車検証や自賠責保険証まで要求される。これらを沖縄市役所に提出する必要があるそうだ。
しかも、米軍の意向によっては許可が下りないこともあり得る。また、基地によっては休日や祝日には入れないケースもある。
自分のご先祖様のお墓に自由にお参りできない。ここは本当にニッポンなのか、という気になる。
しかも、たとえば普天間基地の場合、お墓参りができるのは年に一回だという。シーミーに合わせてあらかじめ米軍に申請し、許可が出た数百人がいっせいに基地内に入り、お墓でウートートーする。その頭の上をオスプレイなどが離着陸していくわけだ。
また、以前嘉手納基地では立ち入りできるのはほぼ金曜日に限られていた(現在は希望に沿う方向で調整してくれるという)。
また、時間は午前9時から午後4時の間の2時間のみ。さらに、安全上の理由で線香に火をつけることはできず、火のついていない線香を墓前に置くことしかできない。

当然ながら嘉手納基地の中にも相当数のお墓があるはずで、以前はお参りできるのが金曜日に限られていた。

 

根本的な解決策は基地の返還

この状態を放置しておくと不自由なお墓参りを続けることになる。それがイヤなら、お墓を移転するしかない。
しかし、そのためには基地外に新しいお墓を購入する必要があり、その費用の補償などがあるのかが問題になるだろう。
そもそも、自分の土地を強制的に取り上げられた上に、そこに建っているお墓を移さなくてはならないというのは、納得できる話ではない。
もちろん根本的な解決法は、基地が返還されることだ。
しかし、それがいつになるかはわからない。普天間基地の返還は1996年4月に日米で合意されたが、それから28年経つ現在でも実現されていないのは、ご承知の通りである。
自分のご先祖様が眠るお墓に自由にお参りできない。許可を得てなんとかお墓に着いても線香を上げることすらできない。

こんなところは世界中のどこを探しても沖縄しかないはずだ。ご先祖様もあの世で胸を痛めているだろう。なんとかならないものか。

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吉田 直人 よしだ なおひと

沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。

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