2024/01/12

【成功する沖縄移住】悩める移住希望者の味方「地域おこし協力隊」とは?

「移住したいけど仕事をどうするか」「できれば2、3年住んでみてなじめそうなら本格永住したい」などという人にうってつけの制度がある。地域おこし協力隊というものだ。特に若い人のプチ移住には利用価値の高そうな制度なので紹介してみる。

 

移住希望者と受入側の利害が一致

地域おこし協力隊はもともと、「大都会を離れて田舎暮らしがしたい」「大自然と親しみながら生活したい」「のんびりした環境で人間らしさを取り戻したい」などと、地方で暮らしてみたい人を対象とした制度だ。
一方、彼らを受け入れるのは、少子化や高齢化が進んで活力を失っている、または近い将来そうなりそうな自治体である。
地域外の人を受け入れて働いてもらって定住を支援し、地域の活性化に役立てようという目的がある。
つまり、移住したい人と移住してもらいたい地域の利害を一致させるというか、今でいうマリアージュみたいな制度なのである。

 

北中城村の実例

コロナ前のことだが、筆者は北中城村の地域おこし協力隊一期生3人に取材したことがある。
そのときの話を元に、協力隊の特色をみてみよう。
地域おこし協力隊の隊員は、自治体が雇う形となる。雇用期間はおおむね1年から3年程度。給料や待遇などは自治体によって違いがある。
北中城村の場合、隊員の給料は年間で200万円と決まっており、別途活動費が年間最大200万円支給される。この活動費から家賃や車代がまかなわれる。
ちなみに家賃は6万円未満とされている。隊員がその条件に合った物件を村内で探し、役場が借り上げる形になる。
民間で一般的な借り上げ社宅のスタイルだが、アパート一棟丸ごとというわけではない。隊員が個別に探すので、住むところはまったくバラバラだ。
ただし、地域おこし協力隊の隊員は所属する市町村に住まなくてはならないことになっているので、バラバラではあっても北中城村内であることに変わりはない。
隊員が使う車の費用も活動費から出る。これが月3万円。家賃、車代にその他雑費を合わせると月額9万5000円くらい。年間で115万円程度になる。
普通に働いていればこの115万円も自分で負担するものだ。これに給料の200万円を合わせると年間の実収入は315万円
しかも雇用保険、健康保険、厚生年金なども完備されており、有給休暇などの制度もちゃんと用意されている。
沖縄で働く20代30代なら悪くない。恵まれているかもしれないほどで、ぜいたくをしない限り食べるのに問題はないだろう。
したがって、収入面から見れば地域おこし協力隊以外の仕事をする必要はなさそうだ。
ところが、この3人ともほかの仕事をしている。それは必ずしも地域おこし協力隊の給料では足りないからではない。どちらかというと地域の人々とふれあう機会を増やすためにダブルワークをしているらしい。
さらに、隊員卒業後の定住や起業なども視野に入れていると思われる。
ところで活動費は年間200万円と紹介した。前述のようにその半分強が家賃や車などの生活関連にまわされる。
で、残りの半分弱はどうするのかというと、研修に使うこともできる。たとえばドローンの研修というのもある。
かなりユニークだがそれが地域おこしに役立つなら「やったらいいさ〜」ということになるから、わりと自由も利くのである。

ただし、現在はディテールが変わっているかもしれないので、最新の情報については各自治体に確認いただきたい。

ちなみに沖縄においては2024年採用として離島の伊平屋村が募集を行っているので下記もご参考に。

https://www.iju-join.jp/cgi-bin/recruit.php/9/detail/55108

 

ひまわりといえば7、8月ごろ咲く花で、俳句においても夏の季語であるが、それが真冬に咲くことにある意味沖縄の恐ろしさすら感じられる(©OCVB)

隊員の仕事は事務作業からイベントまで多彩

隊員のAさんは東京都出身の30代男性。地域おこし協力隊における仕事内容はメディア対応やPRなど。フェイスブック等のSNSも駆使しながら北中城村の魅力を発信している。
地域振興イベントに関わるのも大事な仕事。たとえば2009年から続いている「ひまわりin北中城」だ。
これは日本一早いひまわり祭りと称して毎年2月下旬ごろに開かれるイベントで、冬にもかかわらず約22,000㎡の畑に、20万本の鮮やかな黄色のひまわりが咲き乱れるというものである。
Bさんは兵庫県出身の女性。体育系の短大を卒業し、スポーツ関係の仕事をしていたこともあって、健康長寿のまちづくりを行う北中城村で体育の日に村民対象の体力測定も担当している。
Cさんも兵庫県出身の女性。得意分野はデザインで、それを発揮して村内イベントのチラシ制作などを手がけている。
3人とも口をそろえて地域おこし協力隊の仕事は楽しいと話していた。

 

のどかな風景の北中城村だが、約18,000人が住む日本で5番目に人口の多い村である(©OCVB)

北中城村は過疎地域とはいえないのになぜ?

ところで地域おこし協力隊は、本来過疎の進んだ地域で導入されるのが一般的だ。そこからすると、北中城村はやや例外的である。
というのも同村は、日本一人口密度の高い村であり、過疎地とはいえない地域なのだ。
ではなぜ地域おこし協力隊を受け入れるのかというと、ひとつにはイオンモール沖縄ライカムの存在がある。
2015年に北中城村内に開業したこの沖縄最大級のショッピングセンターは、イオンの他店舗と違い、リゾートモールという位置付けがされている。
そのため観光客も多く、開店から1年で東京都の人口に匹敵する1300万人が訪れた。
この巨大ショッピングセンターは村を確実に変えつつあるが、村民はその変化についていけていない
こうした変化と村民の間を取り持つのも地域おこし協力隊の重要な仕事というわけだ。
しかも、いきなりはダメ。あくまで少しずつ変えていかなくてはならない。
また村民はおだやかな人が多く、「オレがオレが」としゃしゃり出てくるタイプはほとんどいない
だからリーダーシップは必要だが、強引なやり方はNG。あくまで物事をおだやかに進めていける人材が必要とされている。
そもそも「地域を変えよう」という発想よりも「少しずつよくしていこう」という発想でいたほうが、こののどかな村にはなじみやすいようだ。
こうした役割も含めて、都会出身の若い力が求められるわけである。

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吉田 直人 よしだ なおひと

沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。

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