2024/02/16

【成功する沖縄移住】福井→沖縄→カナダ→沖縄、2回目移住で自分を発見した女性

北陸で生まれ、カナダ留学を挟んで沖縄に2回移住した女性にインタビューしたことがある。2度目の沖縄移住で初めて自分の意思で自らをコントロールできるようになったという。そのいきさつを紹介する。

特に興味があったわけではない、彼氏についてきただけ

Cさんは福井県の出身。大学卒業後、名前を出せば誰でも知っている大手流通企業に就職した。
いい会社ではあるものの、ほかのことにもチャレンジしたいと思うようになり、6年ほど勤めたのちに退職する。ただし、その会社との縁はすぐには切れなかった。
というのも当時付き合っていたのは職場で知り合った人で、その人の転勤についてくる形で第一回目の沖縄移住をする。
引っ越してきて沖縄市の海の近くに居を構えることになった。しかし、生活が始まってみると、ある種の違和感を抱くようになった。
独特の文化があるのはいいが、それが日本の社会から隔離されたように感じられ、「なんか違う」と思うようになった。
日本との違いを沖縄の魅力と感じていたのに、それが裏目に出た形だ。
たとえば、本土ではスーパーで買い物したとき自分で袋に詰めていたが、当時の沖縄では店員さんが詰めてくれるのがデフォルトで、それが不思議だった。
ありがたいけど「なんか違う」。メディアを通して沖縄のことを知っているつもりだったが、観光地ではない生活の現場に入ってみると、小さなことに違和感とストレスを覚える。
そして「このままいたら大変なことになる」と思った。

 

沖縄で就職してみたものの…

そこで仕事を探すことにした。まずは沖縄市にあるジョブカフェに顔を出した。
ジョブカフェとはハローワークのカジュアル版みたいなところで、就活を支援する施設だ。
うるま市で就職合同説明会が開かれることを知り、行ってみた。そこに参加していたIT系企業に事務職として入社する。
移住して家を見つけて就職も決まり、沖縄暮らしも軌道に乗ったかに見えた。ところがそうは問屋が卸さなかった。Cさんはさらに強い違和感と深い孤独感を抱くようになる。
「自分から積極的に社会に関わっていかないとやっていけないのが現実だと知った。そういうディープな生活感にも違和感を覚えて…」と話す。さらに会社での人間関係にも悩む。会社の核になる人と合わないのは厳しい。
沖縄の、しかも規模があまり大きくない会社では、社長の下の社員は横並びで風通しも仲もよく、和気あいあいと仕事をしているところが多い。いわゆる文鎮(ぶんちん)型組織だ。
それはいいのだが、こういう会社では社長など核になる人との相性がよくないと、かえって居づらさが増す
間に入ってクッションになってくれる上司や先輩がいなければ、さらにそうなりやすい。知人に相談したところ「あなた向いてないよ」といわれ、衝撃を受ける。そして自分の将来を考え直さざるを得なくなった。

 

そしてカナダへ留学するも寒さに耐えきれず帰国

で、どうするか。まずは自分のスキルを磨いて、それを武器にして生きていこう。磨くのは英語力だ。
彼女はそう考え、ワーキングホリデーを利用してカナダへ留学することにした。ワーキングホリデーとは一定期間外国で働きながら滞在できるという制度である。
ただし年齢制限があり、そのときの彼女は制限ぎりぎりだった。これがラストチャンスとトロントへ渡った。
現地ではチョコレート屋で働いた。そこには世界中からの移民もいて、国際感覚を磨くのに役立った。そして手先が器用で細かい仕事が得意な日本人として重宝された。
しかし、トロントは寒過ぎた。彼女のビザの有効期間は1年。夏から翌年の夏までだった。つまり冬のワンシーズンを始めから終わりまで体験する。
ちなみにトロントの冬はマイナス20℃ほどまで下がることがあるらしい。体感温度でいえばマイナス30℃くらいになる。
いくら北陸出身とはいえ、温暖な沖縄から行ったらこれは寒過ぎる。さすがに「日本に帰りたい」と思った。
そこで夏を待たずに帰国。いったん福井に戻った。
そのとき、痛感したのは、せっかく磨いた英語力も使わなければ退化してしまうこと。ネイティブではないのだから勉強を続けなければならないと強く思った。

雪景色のトロントの街中を走る路面電車。写真を見るだけでその寒さがわかろうというものだ。

 

沖縄では雪が降らないのは当然として、2月に市民マラソン大会が開催されるなど、カナダとは気候が違いすぎる。帰ってこようと思うのは自然かも。写真は沖縄マラソン(©OCVB)

 

沖縄の会社への就職活動は人材紹介会社がサポート

いったん福井に戻ったものの、働く場所は沖縄と決めていた。カナダから帰る先は沖縄だったのである。そして人材紹介会社が紹介した会社に就職することになる。
入社したのは那覇市内にあるIT系の会社。給料は沖縄では普通レベルだが、以前勤めていた東証一部上場企業の半分程度だという。それでも仕事についてはまったく未経験なので、かまわないと思っている。
仕事は、お客さんからの問い合わせに対応するのがメインだ。取り扱っている製品自体英語がベースのため、得意の英語も生かせる
プライベートの彼女は基本インドア派だが、ドライブも好きだ。景色のきれいな北部を巡ったり、南部にタイ料理を食べに行ったりする。
ただ、交通事情では困ることもある。まずは渋滞だ。モノレール以外電車がないだけに車で通勤する人も多く、特に朝の混雑は頭痛の種になっている。さらに平気で路駐して渋滞の原因になる車や、あり得ないところで右折する車にはまいる。
一方で、ゆいレールが延伸したり、沿線やほかの地域でも新しい道の建設が行われたりしているので、交通状況の改善に期待もしている。

沖縄都市モノレールいわゆるゆいレールは、延伸したり従来の2両編成が3両に増えたりと交通状況の改善に寄与している(©OCVB)

 

沖縄に来て自分の生き方を自身でコントロールできるようになった

沖縄に来て一番よかったことは、自分の生き方を自分でコントロールできるようになったこと、と彼女はいう。
とにかくカナダから帰ってくるまでは、自分の住むところを自分で決めたことがなかった。
2回目の沖縄移住で、生まれて初めて自分の住むべきところがどこかを考えた。自分の立ち位置をしっかり考え、その目線で住まいを選び生活を始めることができた。
真の自立ができた場所は、たまたまかもしれないけど沖縄だった。しかも日本各地や外国まで渡り歩いてやはり沖縄にたどり着き、初めて自分が冷え性であることを知ったのである。その意味でも、当分は沖縄で暮らそうと考えている。
会社は気に入っているし、仕事には前向きに取り組んでいて、自分にとってはいい状況だという。沖縄の社会も先行きは不透明な部分もあるが、覚悟を持ってやっていきたい。
18歳で地元の福井を出て以来、2、3年のスパンで引っ越しを繰り返してきたが、今度こそ腰を落ち着けたい。それが沖縄だったらいいと思う。だから、永住も視野に入れている。
そんな彼女が移住を考えている人にいいたいのは「まずはやってみないとわからない」ということ。
沖縄移住に関心があるのにいつまでも二の足を踏んでいるのはもったいないと、外国から戻って沖縄に腰を落ち着けたCさんはいう。
今はネットがあるから情報も入手しやすいし、とにかく、エイヤ!と気合いでやってみることから始めようとアドバイスする。
ダメだったらダメでいいじゃない

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吉田 直人 よしだ なおひと

沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。

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