2024/02/23

【成功する沖縄移住】「寒いのイヤ」と仕事も決めずに来た三重出身女性

寒いのが大嫌いで暖かいところに住みたいと、仕事も決まっていないのに「エイヤ!」と三重県から移住してきた独身女性がいる。職もないまま引っ越してきて大丈夫かと思いきや、コールセンターに仕事を得て暮らしは順調。移住成功の一例として紹介しよう。

焦ってハローワークで探したが見つからなかった

Dさんは高校卒業後アパレル関係の販売やセレクトショップなどで約15年働いた。
沖縄に移住しようと思ったきっかけは旅行だった。何度か来ているうちに、いずれ沖縄で暮らしたいと夢を持つようになった。
マリンスポーツをやっていたこともあって海が好きだし、のんびりとした沖縄時間も自分のリズムに合っていた。
さらに、毎年冬が来るのがイヤというくらい寒いのが嫌いで、いつかは絶対暖かいところで生活したいという願望もあった。
そこで、たまたま独身で自由に動けることもあり、思いきって単身で移住に踏みきった。
Dさんの場合、仕事を決めないままの移住だった。なので沖縄に来てから焦ったという。
行けばなんとかなるだろう、と思っていた。それが仕事探しは意外に苦戦した。
ないわけではないが、選んでしまうとなかなか希望に合う仕事が見つからないのである。結局ハローワークではいい仕事に巡り会えなかった。

 

最初は派遣でコールセンターに就職

それでも2ヵ月弱くらいで求人誌を通じて働く場を見つけることができた。コールセンター事業をメインとする会社だ。
「ずっとアパレル中心に仕事をしてきた。コールセンターなんてまったく経験はなかった」
もちろんその会社の存在も知らなかった。わかっていたのは、沖縄ではコールセンターの求人が多いこと。
だが、自分にとって興味のない業種と関わるコールセンターが大半で、就職先としてはないだろうと思っていた。
しかし、たまたま化粧品の販売に関わるコールセンター業務という求人を見つけた。
三重でセレクトショップに勤務していたころ、輸入物の化粧品の販売をしていたこともあり、これなら自分にも興味の持てる仕事だと考えて応募することにした。
ただし、この求人を出していたのはその会社そのものではなく、派遣会社だった。したがって、その会社での仕事は派遣でスタートした。業務は希望どおり化粧品の販売である。
そして、半年後には直接雇用に変わった。これはもともと直接雇用に切り替える前提での派遣だったからだ。
それどころか、取材時には、一般企業でいえば係長もしくは主任クラスになっていた。
ちなみに、出勤時間はお昼12時で、仕事が終わるのは21時。休憩1時間を除いて基本8時間勤務である。
事務処理などの業務もあり、たまに22時あがりになる日もある。業務内容としては電話を使った客への発信だ。
仕事は「楽ではないが、それはどんな仕事でも同じ。ずっと販売の仕事をしてきて、人と話すのは好きだし、新人さんの指導を担当させてもらったり、現場の管理もさせてもらったりというのにはやりがいを感じている」という。
収入的には三重で働いていたころのほうがよかった。しかし、たとえば最低賃金で比べてみても沖縄より三重のほうが高い。ベースラインはあちらのほうが高いのである。
ただ、沖縄県内で比べてみれば、コールセンターの時給はほかの職種よりは高い傾向にある。
特にDさんが三重で従事していたアパレル販売の仕事を沖縄でやったら時給はコールセンターより下がるだろう。
ところで移住前は、知人らから「沖縄の人は外部から来る人間を簡単には受け入れない」といった話も聞いていた。
観光で来る人にはやさしいが、そのイメージで移住して来ると実は違ったりする、といったような話である。
「しかし実際は逆で、まわりの人たちはやさしくて親切なので安心して生活できている」と話す。

コールセンターは多様な雇用形態を整えているところが多い。最初は派遣でも全然OK。

 

新築物件のカビに悩まされたけれども…

取材時、Dさんは豊見城市に住んでいた。那覇空港に近いあたりだ。通勤は車で、会社まで30分ほど。
ウチナーンチュの感覚からすれば近いというほどではないが、会社が那覇市の高台にあるのに対し、Dさんの自宅は海に近い。
美らSUNビーチという広くてきれいなビーチも目と鼻の先にあり、環境はすばらしい。出勤がお昼、帰りは夜なので渋滞に巻き込まれることもない
「趣味は特になく、休みの日は疲れて寝ていることが多い」
とはいうものの、買い物は好きだし、旅行も楽しんでいる。石垣島や小浜島など県内の離島巡りもしている。
お酒は飲めないが食事は問題なし。住まいも静かな点が気に入っている。
那覇市の中心部あたりだと夜でも騒音があったりして、気になる人は気になるからだ。
しかし、湿気対策には苦労した。暖かいというイメージで来てしまい、湿気が多いといわれていたのにほとんど気にも留めていなかったのだ。
気がついたら服という服、さらに靴までがカビだらけ。それらは捨てざるを得なかった。
「今は対策法がわかったので改善されたが、これから移住してくる人は特に新築の物件ではカビに気をつけてほしい」
その対策というのはエアコンをつけっぱなしにすることだ。不在時もドライでつけっぱなしにする。そのほうがかえって電気代も安いと彼女はいう。
「除湿器も使ってみたらすぐに満水になって驚いた」ほどなので、冬場の乾燥する時期はともかく梅雨時から夏場にかけてはこれが一番有効なカビ対策といっていいだろう。「もともとエアコン付の物件なので助かった」
さらに「海が近いのはいいが、車とかが錆びてしまう」ともいう。いわゆる塩害だ。
意外に湿度が高く、海のそばは塩害が激しい。この気候・風土の違いには驚いた。とはいえ、引っ越そうとまでは考えていない。
ちなみに、あらかじめ下見に来たときに住まいは決めていたという。先に荷物も送ってあったので、すぐに住むことができた。
「住むところより仕事決めるのが先だろうと、あとでいわれた(笑)」

Dさんの住む豊見城市は那覇空港に近いが、きれいな人工ビーチ、美らSUNビーチがある(©OCVB)

 

やっぱり仕事は決めてから移住したほうがいい

「振り返ってみれば、20代の終わりごろから沖縄移住を意識し始めていた」。だが、お金などいろいろ問題があり、なかなか実現できなかった。
しかし、簡単に移住に踏みきれなかったことがいい方向に作用したかもしれないと本人はいう。つまり準備期間を長く取ることができたというわけだ。
それなのに、「仕事については別」という。前述のように仕事についてはあてもなく、就職活動もまったくせずに移住してきたことは自分の性格のなせるワザだというのである。
本来、自分の性格については決めたことは即実行するタイプだと考えている。よくいえば決断も行動も早い。悪くいえば深く考えない。しかし、結果的にはこれが功を奏した形だ。
とはいえ、これから移住してくる人に対しては「仕事を決めてから来て」とアドバイスする。「わざわざいわなくても普通の人はそうするでしょうけど(笑)」
「でも本当は…離島に住みたかった」と付け加える。 当初は石垣島に移住する予定だった。旅行で訪れてみて「ここに住みたい」と思っていた。
しかし、調べてみると仕事がない。オンシーズンにはホテルの仕事などがいくつか出るものの、シーズンオフにはそれもなくなる。これでは暮らしていけない。
そこで結論。「離島に住むのは時期尚早」
ゆくゆくは離島に住みたい。でもそれは歳を重ねて、働く必要がなくなってからだ。
というわけで、まだ30代だし、今は仕事に打ち込むことにしている。会社では一般コミュニケーターを指導する立場になっているが「現状ではぜんぜん仕事をこなせていない」と認識している。
だから仕事に対して自信が持てるようになりたい。そして会社に貢献できるようになりたい。それが今の願いだ。

 

帰りたいなんて、考えたこともない

一般に「沖縄移住者は3年で帰る」というウワサもあるが、彼女の場合は帰りたいなどとは思ったこともないという。
「向こうでも仕事中心の生活をしていたし、実家はあるものの、帰っても友だちはいない」
親しかった友人たちはみんな結婚し、あちらこちらへ出て行ってしまった。なかには海外在住の人もいる。だから三重に帰っても友人に会えるわけではない。
ホームシック? そんなのまったくない」と朗らかに笑う。転職に成功すれば移住に成功する。その典型的なケースのひとつだろう。

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吉田 直人 よしだ なおひと

沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。

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