2024/11/14

【成功する沖縄移住】11月に咲く謎の桜を愛でよう

この時季、国道沿いなどで美しいピンクの花を目にすることがある。遠目にはのように見えて、ドライブやウォーキング中に楽しませてくれるが、まともな桜が秋に咲くはずもない。一体何者だろうか?

 

まだ夏を引きずる中で咲く美しい花

沖縄では11月も中旬に入ったが、いまだに最高気温が30℃近い日があったりする。
かと思えば本島北部ですさまじい雨が降って被害を出し、この時季の風物詩ともなっている自転車レースのツール・ド・おきなわが中止になった。
また、天気予報を見ると、南の海上で台風が3つか4つウロウロして先島や本島をうかがう気配も見せている。
なんだいったい、まだ夏を引きずっているのか! とウチナーンチュは口をあんぐり開けている。秋はどこへ行った?
季節がムチャクチャになっているなか、桜が咲いている。おかげでさらに季節感が混乱するのだ。
しかし、その花は美しく、道ゆく人々の目を楽しませてくれる。その名も南米ざくらだ。

国道330号線の大平インターチェンジ付近では、ほぼ満開状態に咲き乱れている。

秋ごろにピンクの花を咲かせる。花は直径が10cm以上あってヒトデのような形をしており、鮮やかな色で人目を引く。

 

正体はトックリキワタという南米原産の樹

もちろんいくらなんでも11月にソメイヨシノやカンヒザクラが咲くわけがない。というか、咲いているのは厳密にはサクラ属ですらない。
正式にはトックリキワタという樹で、日本では沖縄などの温暖な地域で庭木や街路樹として植えられている。
名前の由来は幹が徳利(とっくり)のようにふくらんでおり、実が熟すと中からコットンのような白い繊維、木綿(きわた)が現れることである。
別称の南米ざくらの由来は、ブラジルやアルゼンチンなど南米が原産であることだ。
また、個体によって幹にとげがあり、これが樹を独特な外観にしている。独特というか、異様といってもいいくらいで、花の繊細な美しさと対比をなしているのもおもしろい。

ふくらんだ幹には水分を蓄える役割があり、乾燥に強いのもトックリキワタの特徴だ。

実から出る綿は天然の素材として、かつては枕やクッションの詰め物としても利用されていたという。

 

国道沿いに270本が植わっている

沖縄でトックリキワタの花が見られるのは10月下旬から12月上旬にかけてである。
カンヒザクラが咲き始めるのが1月中旬なので、それより2ヵ月以上も前に咲き始めるので、いわば本物の桜の前座みたいに感じられて、それがかわいくもあり魅力でもあると、筆者などは思っている。
ところで、国道330号線(通称バイパス)の古島インターチェンジから大平インターチェンジの約2kmの区間には上下線合わせて270本のトックリキワタが街路樹として植えられている。
一部は筆者のウォーキングコースになっており、今の時季トックリキワタの花を見ながら歩くのが楽しみのひとつになっている。

国道330号線にはいわばトックリキワタ並木と呼びたい区間がある。場所によっては歩道に散ったピンクの花を踏んで歩くのに罪の意識を感じたりする。

 

スペイン語圏では酔っぱらいの樹と呼ばれている

ところでトックリキワタはアオイ目アオイ科に属する。アオイ科には、アフリカやオーストラリアで見られるバオバブも属する。
樹高が10mは優にあることや、太くて迫力を感じさせる幹などもあり、トックリキワタを見るとバオバブの樹を連想する人もいるだろう。筆者もそのひとりである。
なお、トックリキワタは、スペイン語圏ではパロボラッチョ(palo Borracho)と呼ばれているらしい。paloは樹、Borrachoは酔っぱらいを意味するという。酔っぱらいの樹というわけだ。
また、ブラジルでは、お腹ぽっこりを意味する名で呼ばれているという。幹が腹の突き出たオヤジみたいだからかも知れない。

総合すると腹の突き出た酔っぱらいのオヤジということになるが、やはり花の美しさとはギャップがあっておもしろい。

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吉田 直人 よしだ なおひと

沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。

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