【成功する沖縄移住】「A&W」がなければこの世に存在しなかったウチナーンチュもいる!?
以前、A&Wのルートビアという飲み物を取り上げたが、考えてみるとA&W本体についてはまだほとんど触れていなかった。そこで今回は、このファストフードチェーンについてきちんと紹介してみたい。
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1963年開店の日本初のファストフード店
A&Wはマクドナルドの同業者で、日本で最初のファストフード店である。
日本マクドナルドが銀座に1号店を出したのが1971年、それに8年も先立つ1963年にA&W沖縄1号店が北中城村屋宜原にオープンしている。
そのときウチナーンチュは、沖縄の、いや日本の常識すらくつがえすハンバーガー屋の姿にタマシヌギル(魂が体から抜け出る)ほど驚いた。
闇夜を圧倒するネオンサイン、たかがアメリカー食堂にしては広すぎる敷地、そこへ乗り入れるピカピカで巨大なアメ車、駐車スペース脇に設置されたインターフォンという見たこともない機械、クルマまで商品を持ってきてくれるかわいいネーネー・・・
さんざん思い知らされていたはずのアメリカ文化の奥深さを、またまた実感させられたに違いない。
デートにも最適とウチナーンチュが気づく
1号店は嘉手納基地に近いこともあって、当初はアメリカ軍人をターゲットにしていたようだが、そのうち若者を中心にウチナーンチュも出入りするようになった。
スマートでカッコイイ、そしておいしいアメリカへのあこがれがその根底にあった。
さらにしばらくすると、デートスポットとして最適であることを若者たちが発見する。
クルマに座ったままインターフォンで注文すると、ハンバーガーを持ってきてくれるので、それを食べながら、いつまでも話していられる。
24時間営業だから閉店時間を気にする必要もない。
愛を育んだ膨大な人々
したがって、ウチナーンチュにとってA&Wは単なるファストフード屋ではない。恋と青春のステージだったのだ。
ハンバーガーをほおばりながら2人っきりの世界にひたり、愛を育み、結ばれて・・・もちろんA&Wで結ばれるわけではないが、とにかく、こうしていっしょになった夫婦は膨大な数に上る。
「沖縄中のA&Wをまわったら結婚しよう」とプロポーズした男性も実在する。
温かみもほろ苦さもある
A&Wにはたしかに温もりがある。ウェイトレスがクルマまで商品を運んでくる点にも、普通のドライブスルーとは違って、おもてなしの心が感じられるのだ。
そのウェイトレスが金髪で、ホットパンツにローラースケートはいていたらもっといいと思うのはオヤジの発想である。
とはいえ、クルマをぶつけた苦い思い出を持つ人も多い。
駐車スペースに入るとき、ハンドルさばきがいい加減だと、インターフォンと一体になったトレイにミラーをぶつけたりするのだ。
本人はショックだろうが、見てる方は思わず笑ってしまう、シャレになる光景でもある。
エンダーはウチナーンチュの心とつながる
ちなみにA&Wは沖縄では「エイアンドダブリュ」ではなく「エンダー」と呼ばれる。
エンダーの不思議のひとつが、沖縄以外では生きられないことである。かつて東京、大阪、兵庫などにも進出したが、ことごとくつぶれてしまった。
ウチナーンチュのメンタリティだけがエンダーのやさしさと呼応するのだろうか。
ちなみにA&Wの本体は100年あまり前の1919年にアメリカで創業しており、現在もアメリカに行くとときどき店舗を見かけることがある。
ウチナーンチュにとっては恩人といってもいい
本来は欧米式合理主義の申し子であるが、アメリカがもっとも繁栄を謳歌していた1950年代のなごりもあり、なんとなくおおらかで自由な空気感がある。
その中で愛を語り合った男女が幸せな家庭を作ってきた。エンダーは数えきれないほどの幸福を育んできたともいえる。
その意味でウチナーンチュの恩人でもある。この店がなかったら、生まれてこなかった人もたくさんいるはずなのだから。
ウチナーンチュはエンダーの60年間の貢献に感謝すべきである。
日本政府がこれまで沖縄に対して行った振興策に劣らないほどの貢献だったといえば、ちょっといいすぎだけどね。
ちなみにエンダーの牧港店には、遊具も備えた子どもの遊び場がある。
この店で愛を育んで結ばれたカップルの、その結晶についてもめんどうを見ようという発想なら大したものだが、たぶん考えすぎだろう。
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吉田 直人 よしだ なおひと
沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。
著作の紹介
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