2023/05/12

【成功する沖縄移住】沖縄移住の流れを生んだ「沖縄ブーム」って、なんだったん?

思い返せば沖縄移住にはいくつかのがあった。その原動力のひとつは東日本大震災である。東京電力の原発事故によって漏れた放射能から逃れようと多くの人が移住してきたのである。もっと前の波の原動力は沖縄ブームだろう。それこそ、沖縄移住ウェーブの産みの母といえる。沖縄ブームとは何だったのか、振り返ってみる。

 

火を着けたのは音楽

沖縄ブームの始まりにはいろいろ説があるが、安室奈美恵をはじめとするウチナー(沖縄)出身ミュージシャンが火を着けたという説が有力だ。

安室がブレークしたのは1995年ごろ。以後、SPEED、MAX、DA PUMP、Kiroro、Begin、夏川りみ、仲間由紀恵、Gackt、MONGOL800、ORANGE RANGE、D-51など、数多くのウチナーンチュアーティストがヒットチャートをにぎわせ、目を見張る活躍をしている。

ちなみに、この現象は偶然ではなく、生活の中に音楽が浸透している土地柄であることが影響しているはずだ。

ところで、仲間由紀恵は俳優であってミュージシャンではないだろう、というツッコミもあるかもしれない。たしかに彼女は俳優としてブレークしたが、1996年にファーストCDも出している。

以後、シングルとアルバムで10枚ほどをリリース。2006年には仲間由紀恵withダウンローズとして「恋のダウンロード」を発表してヒット。当初auの「着うたフル」限定だったが、好評のためにCD化された。

音楽とダンス、伝統の琉球文化と戦後のアメリカ文化。それらが入り交じって、人気ミュージシャンを輩出する土台を作り出している、はず(©OCVB)

 

NHKの「ちゅらさん」人気が火に油

さらにブームをあおったのが「ちゅらさん」だった。2001年にウチナー出身の女優、国仲涼子の主演で放送されたこのNHKの朝ドラは全国的な人気を呼び、続編も次々に制作された。

ただし、せりふのイントネーションが変で、地元では「気持ちが悪くて聞いていられない」という声もあった。

たしかにウチナーンチュがあれを聞いたら、内股をゴキブリがはうような感覚に襲われて身もだえするのは確かである。

 

年に1000万人もの観光客が来る!

音楽もドラマもヒットする状況のなか、観光客数は当然のように増え、2018年には年間1000万人を超えた。

その後、コロナ禍で激減したものの、それが落ち着けば再び1000万人を超えるのはまちがいないだろう。

ちなみに、日本に復帰した1972年の観光客数は44万人だった。沖縄観光はデビュー以来46年間で20倍を軽く超える伸びを記録したことになる。

 

異質が気軽に楽しめるのがいい

なぜ、これほどのブームになったのか。それはひとことでいうと「気軽に異質」なところである。

自然、歴史、文化、人…。さまざまなことが日本と違っている。それが、日本人の目には新鮮に映る。というか、おもしろい。

そんな場所が国内にあり、パスポートもビザも必要なく、気軽に、安く行けて、日本語が通じる。治安もいいし、病気やケガをしても病院はいくらでもあるし、健康保険も使える。しかも海が美しい。

あるいは「日本にあるアジア」という感覚か。地理的に見ると確かに東南アジアの入り口に位置している。

沖縄を訪れる人は、その背後にアジアの広がりを見ているのかもしれない。沖縄は「アジア入門」の地でもある。

ただし、上記は筆者独自の見解であり、一般的にいわれていることではない。もちろん根っこでは日本としっかりつながっているのだろうが、違う歴史を歩んできたために、表面的には異質に見えるわけだ。

鮮魚店に並ぶ魚を見るだけで異質さがわかるはず。文化も異質だが、その背景になっている自然からして異質なのである(©OCVB)

那覇市内の市場は、まさにアジアの空気感に満ちている。上は旧牧志第一公設市場(©OCVB)

市場といえば、栄町市場はもっとディープである。豚の顔が丸ごと売られている風景は、おそらく日本の他の地域では見られないだろう(©OCVB)

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吉田 直人 よしだ なおひと

沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。

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