2024/06/15

【成功する沖縄移住】やんばる国頭村で幸せに暮らそ!

国頭は、やんばるの極致ともいうべき村。本島北部は世界自然遺産にも登録されているが、その代表ともいえるのがこの地域である。とんでもなく美しく豊かな自然環境の中で暮らすとはどういうことか。その一端を実例も含めて紹介してみる。

 

村の85%は亜熱帯ジャングル

国頭郡国頭村は沖縄本島の最北端に位置する。ちなみに沖縄県の最北端は伊平屋島であり、国頭村ではない。
村の面積194.8km²は県内41市町村のうち5番目に広いが、人口は約4,500と現在27位である。
一方、森林が166.1km²あり、村の総面積の85%を占める。森林と表現しているが、これは事実上ジャングルである。
ご存じの人も多いだろうが、この亜熱帯ジャングルは希少な動植物の宝庫であり、ヤンバルクイナやノグチゲラ、ヤンバルテナガコガネなどの天然記念物がうようよしている。やんばる国立公園のかなりの部分を国頭村が占めているのもうなずける。
美しい川や滝もあり、ハイキングやトレッキングにも最適。そうした趣味を持つ人には天国のようなエリアだろう。

住民にとっては身近な生き物であるヤンバルクイナ。天然記念物が家のまわりをうろうろしているなどというのは、ここぐらいのものだろう。

 

マンゴー栽培で成功した移住者の実例

産業は、近年は建設や観光業などに従事する人も多いが、伝統的には農業や林業、漁業といった第一次産業である。
農業ではマンゴーやパイナップルなどのフルーツ、サトウキビ、肉用牛や養豚なども広く行われており、農業に参入する移住者もいる。実例を紹介しよう。
加藤さん(仮名)は愛知県出身で、沖縄でマンゴーを作りたいと、国頭村へ移住してきた。
村内のマンゴー生産企業で一年ほど実習し、約1,000坪の農地を購入してビニールハウスを建て、化学肥料や農薬を使わない自然農法でマンゴーを作り始めた。
「実習をさせてくれた会社、農地を売ってくれた方、家を紹介してくれた方、そして妻との出会い・・・いろいろな縁があってここまで順調に来れた」と本人はいう。
移住後子どもが3人生まれ、朝は車でこども園に送ってからマンゴー園で作業する。
自然農法なので手がかかり、収量も多くはないが、高い単価で売れるので十分採算が合うという。
田舎暮らしは人間関係が大変という話も聞くが、地元の人たちが優しくて気づかいもしてくれるので、そんな苦労はほとんどないという。
休日は子どもたちと川で泳いだりエビを捕ったり、海水浴をしたり、釣りをしたりするという。
温かい人々と豊かな自然に囲まれた移住生活を楽しんでいるようだ。

 

潜り漁で家を建てたウミンチュ移住者の実例

漁業は近海物を中心に、南国らしい魚がたくさん揚がる。

中川さん(仮名)は移住後に村内のリゾートホテルで働いたあとウミンチュ(漁師)に転身した。
当初は半年くらいいるつもりだったが、気がついたら軽く30年を超えていたという。
この間、職場だったホテルで知り合った妻と結婚し、家を建て、子どもも3人できた。
仕事は潜り漁で、値の高い魚との駆け引きを楽しんでいるという。ただし、ウミンチュになるには地元の漁協に入らなくてはならない。それは一般的にハードルが高いともいわれる。
ただ、中川さんによるといくつか条件はあるものの、それさえ満たせば県外出身者でも組合員になれるという。ちなみに彼は初の県外出身組合員二人のうちのひとりだった。
仕事はがんばればがんばるほど実入りがいいし、国頭村は住みやすい多少の不便はあるものの離島ほどじゃない。車で30分も走れば町に出られる。
一番大事なのは地元にとけ込めるかだが、みんな優しいのでまったく問題ない。
子どもが帰ってくるところを確保しておくという意味でもここで暮らし続けたいという。

山と海が接する狭い場所に身を寄せ合うように家が建つ国頭の集落。宜名真という地区で漁業も盛ん。

 

いいところだが病気やケガすると大変

自然が好きで自分に合った仕事を見つけられるなら、国頭村は移住先としていいところだ。
しかし、問題もなくはない。最たるものは医療だろう。村内に大きな病院はないから、入院が必要になるような病気やケガに関しては、やはり不安な面もある。
それと、国頭村は広大なため、救急車を呼んでも来るのに1時間近くかかる地域もある。
さらに、そこから名護市にある総合病院に搬送するにも1時間半くらいかかったりする。
つまり、119番してから医師の治療が受けられるようになるまで2時間半から3時間程度かかるケースもザラなのだ。
もっとひどいのは山の中でケガをしたり急病になった場合である。
消防に連絡が取れたとしても場所を伝えるのが難しい。救急隊も村の面積の85%がジャングルという地域で、要救助者を見つけるのはきわめて困難である。
というわけで、田舎暮らしにあこがれるのはけっこうだし、自然環境や人の優しさを考えると国頭村は理想的かもしれないが、反面でリスクがあることも承知しておいた方がいいだろう。

見渡す限り手つかずのジャングルが広がる国頭の山。希少生物の宝庫であり、全人類の大切な財産といっても過言ではない。だが、この山の中で遭難した場合、救助隊に見つけてもらうのは困難を極める。

 

不安解消のための移住体験住宅がある!

特に都会からの国頭移住については、環境があまりに違いすぎるため、不安を抱く人もいるだろう。
数日滞在して下見するのもいいが、それだけでは不十分かもしれない。
そこで村では移住体験住宅というのを用意している。現在村内に2棟あり、1棟丸ごとだと一人一泊3,000円から、1室なら同1,000円からと、大変リーズナブルな料金で泊まれる。
最大90泊までOKなので、3ヵ月も滞在すればかなりのプチ移住体験になり、住環境の確認には充分だろう。

肉そばという国頭のB級グルメは有名だったが、提供していた辺士名の波止場食堂が2020年いっぱいで閉店したため、今では幻のメニューとなってしまった。

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吉田 直人 よしだ なおひと

沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。

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