2024/06/30

【成功する沖縄移住】屋根に鎮座する水タンクの光と影を理解しておこう

前回の記事では、沖縄が水不足に陥りやすい環境にあることを、移住者や移住希望者にも理解しておいてほしいと書いた。水不足の原因はいろいろあるが、屋根タンクというヤツもそのひとつ。日本ではめったに見かけない屋根に鎮座するタンクとは何者かを紹介してみる。

沖縄名物屋根設置型水タンクにナイチャーが驚く

沖縄で住宅街を徘徊していると、一戸建てやアパートの屋根にタンクが設置されているのを見かける。これは沖縄名物のひとつといっていいかもしれない。日本ではあまり見かけないからだ。
昔はコンクリートやプラスチック製が多く、特にプラスチック製は着陸したUFOにも見えた。

だが、今はステンレスが主流。民家の屋根で、太陽の光を浴びて銀色に輝く円筒状の物体を見かけたら、それはステンレス製タンクである。
北海道の人が沖縄に来て初めてこれを見たとき、暖房用の灯油タンクだと思ったというが、もちろんそうではなくて、泡盛の貯蔵用である。いや、それもウソで、中身はただの水だ。
前にも紹介したように、沖縄は昔から水の確保に悩んできた。台風もちょくちょく来るし、降水量は多いのだが、水が貯まらない

このUFOみたいな屋根タンクはプラスチック製で、比較的古いタイプである。内部の掃除はけっこう大変。

 

これがなければ断水時に川へ水くみに

水が貯めにくいため、台風の強風と洪水にやられた直後に干ばつに襲われてボロボロになるという、意味不明な災厄にいつも見舞われてきたのである。
ダムがたくさんできたおかげで、最近は少なくなったものの、20年ぐらい前まで、断水は日常茶飯事だった。
そのため、ウチナーンチュは自己防衛策として屋根にタンクを設置して水道水を貯め、断水の不便さをしのいできたのだった。
もし、これがなければ断水時にどうなるか。飲料水はポリバケツなどに貯めておくとしても、問題はトイレである。庭に穴を掘ってして、後で埋めるという手もあるが、なかなかそうもいかない。
そこで、トイレ用水を近くの川からくんできたりするのだが、汗だくでバケツ2杯分を運んできても子どもが1回ウンコすれば一瞬でパー、ということになって効率が悪すぎる。

ステンレス製は比較的新しいタイプ。最近はこういうまぶしい系が多い。

 

便利だが自己矛盾や悪弊もいろいろ

屋根タンクはありがたい存在だが矛盾も抱える。水を節約するための断水なのに、あらかじめ水を貯めるので節水効果が低いのだ。

だから断水に踏み切ってもトータルの水使用量はあまり減らない。そして、結局は雨乞いの踊りを踊り狂うことになってしまう。
ほかにもいくつか問題がある。軽めから重めへ順番に解説してみよう。
第一は、真夏は強烈な日差しでタンク内の水が熱くなってしまうこと。湯わかし器を使わなくてもお湯のシャワーが浴びれてガス代の節約になる、というレベルならまだいいが、時にはさわれないほど熱くなる。
こうなったらアウトだから出しっぱなしにして冷たい水が出るのを待つか、夜になって冷めるのを待つしかない。たまにムカつくことがある。
第二として、内部の水が案外不潔だったりすること。内部が錆びたり、いつの間にか藻が発生していたり、いつの間にかフタが開いて虫が入って大量に溺れ死んでいたり、蚊が入っていつの間にかボーフラが湧いていたりする。
容量10t超のタンクは、法律で年一回の検査や清掃が義務づけられているが、10t以下にはそうした義務はない。

そこで設置後一度も掃除どころか目視チェックすらせずに、何年何十年も経っている屋根タンクが沖縄県内に数千、場合によっては万単位で存在するかもしれないのだ。
自分ちのタンクは掃除しているからいいと思っていても、ひとんちで水道水を飲むかもしれないし、そう考えたら恐ろしい。
第三は、停電と同時に断水するケースがあること。特にアパートやマンションでこれに見まわれることがある。
戸数の多い集合住宅では、水の使用量も多いので、大型タンクを設置してポンプで水を屋根に上げていることが多い。
台風などのせいで停電になるとこのポンプが使えなくなり、給水ができなくなってしまうのだ。したがって電気が復旧するまで断水も続く。復旧まで3日くらいかかることもあるから相当大変だ。

オリオンの缶ビールのようなタイプもある。広告を兼ねているのだろうか。

 

シーサー型水タンクなら一石二鳥いや三鳥!

いろいろ自己矛盾や悪弊をはらむ屋根タンクであるが、よく考えたら災害時の備えとしても使えるのではないか。
地震その他で水道が止まったとき、とりあえず数日分の飲料水は確保できるから、沖縄に限らず日本中に普及させたらいいと思うのだが、どうだろう。
屋根に鎮座するものといえば昔はシーサーで、今は水タンクである。風情がなくなってちょっと残念だが、それならデザインを工夫して、シーサー型のタンクを作ればいいのだ。貯水と魔除け、一石二鳥ではないか。

いや、芸術性の高いシーサータンクなら文化の香りも豊かで、一石三鳥にもなりそうだ。

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吉田 直人 よしだ なおひと

沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。

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