2024/07/13

【成功する沖縄移住】織り姫と彦星の年イチデートではない七夕の話

この記事を書いているのが2024年7月13日。6日前が七夕だった。そして旧暦でいうと今年は8月10日が7月7日にあたる。その間に位置する今日このごろ、沖縄の七夕について考えてみる。

 

本来は五節句および三大墓参りのひとつ

沖縄では一年に3つの大きなお墓参りの日がある。
もっとも有名なのは清明祭(シーミー)。現在では主に4月に行われ、一族がお墓に集まってご先祖様に重箱料理を供え、酒を飲んだりもしながら談笑する。
ふたつめは、本島北部や宮古、八重山地方などでさかんな十六日(ジュウルクニチー)。旧暦の1月16日はあの世の正月とされ、親族でお墓に集まってご先祖を供養する。
そして、シーミーやジュウルクニチーに比べると地味かもしれないが、忘れてはいけないのが七夕だ。
七夕といえば、ほとんどの人が織り姫と彦星を思い浮かべるだろう。
7月7日、天の川を挟んで向かい合う織り姫という女の星と、彦星という男の星が、年に一度だけ会えるという。中国ではこれを星祭りと称していた。
星祭りが日本に伝わり、現在の七夕として定着したのである。
一方で、七夕は「しちせき」とも呼ばれ、端午(たんご)、重陽(ちょうよう)などと同じく五節句のひとつでもある。
七夕は、中国や日本のほかに韓国、台湾、ベトナムなど、アジアの各国や地域でも節句とされているという。
昔の日本では、七夕は旧暦7月7日の夜とされ、お盆と関連のある行事と位置づけられていた。

普通の七夕のイメージはこんな感じだろう。ロマンチックな星祭りと合わせて美しい慣習といっていいかも。

 

もともとはご先祖様にお盆を知らせる日

江戸時代までは、7月7日から15日くらいにかけて、家の中に設けた棚にお供え物をかざり、ご先祖様を供養していた。
また、自分の体をきれいにしたり、井戸の掃除をしたりと、身の回りの不浄を清めたりしていた。その流れでお墓の掃除もしていたのである。
つまり、七夕というのは、お盆にご先祖様をお迎えする準備の行事だった。お盆のプレイベントみたいなものだったわけだ。

沖縄の七夕はこれ。草刈りをしたりしてお墓をきれいにすることである。ロマンも美も漂わないが、実務的ではある。

 

新暦導入でお盆と七夕が分離

さて、お盆に関連する行事だった七夕だが、現代の日本ではそのような認識はあまりない。
織り姫と彦星の年一回のデートに合わせて願い事をするというのが、今の日本人の常識となっており、ほとんどの人がお盆と七夕の関係を意識していないだろう。
なぜこうなったかというと、明治になってグレゴリオ暦、いわゆる新暦が導入されたのが発端だ。
旧暦から新暦に変わった際、伝統行事はそのまま新暦に当てはめられた。たとえば旧暦の元日はそのまま新暦の1月1日になったのだ。
わかりやすいといえばわかりやすいが、7月15日のお盆をそのまま新暦に移行させると、特にコメ農家にとっては都合が悪い

この時期、田んぼでは水管理や施肥、雑草取りなどをしなくてはならず、けっこう忙しいので、お盆行事などやっていられない。そこで離れ技が持ち出された。
それが、月遅れというもので、農繁期が落ち着く8月15日へお盆を1ヵ月スライドさせるというものである。
これによって、現代の日本ではお盆といえば8月13日から15日というのが常識となり、企業や官庁などの夏休みもこの時期に合わせるようになっている。
しかし、お盆を1ヵ月ズラしても、その準備をする七夕はズレなかった。七夕は新暦でも7月7日となったのである。
そのため、七夕はお盆と分離されて関連が薄まり、星祭りとしての側面だけが認識されるようになったのだ。

 

沖縄では分離されなかった

一方、沖縄ではお盆を新暦に移行させず、もちろん1ヶ月スライドもせず、旧暦のままとした。旧7月13日から15日である。七夕も新暦に当てはめず、旧7月7日のままとした。
結局どっちもそれまでと変わらなかったので、沖縄ではお盆関連行事としての七夕が残ったのである。
そういうわけで沖縄の七夕は、ご先祖様に「もうすぐお盆ですよ」とお知らせする行事として今に至っている。
お知らせのために、まずお墓参りをするが、これはシーミーやジュウルクニチーほど大がかりなものではない。
お供え物をしたりお線香を上げたりはするものの、ごく近縁の数人で行うのが一般的である。
そして、お墓の掃除をする。お清めの行事としての性格が強い七夕だから、これは大切。
というより掃除がメインだ。お墓だけでなく、家の仏壇にもお供え物をして御願をし、掃除をする家庭もある。
ところで、沖縄では決められた行事以外、むやみにお墓参りをしてはならないという制約がある。
しかし、神様の目が下々まで届かないので、お墓事などをするのによい日というのがある。それを日無し(ヒーナシ)という。
七夕は一年に一度の日無しとされており、したがって神様の目を気にせずに、お墓の掃除ができるというわけだ。
なお、日無しはユンヂチ(閏月=うるうづき)以外には七夕しかない。

お墓を掃除したら、お供えをしたりもする。写真のような本格的な重箱だったりもするが、もう少し簡略版だったりもする。

 

まとめ

現代の日本では七夕とお盆のつながりはほとんどなくなっている。
一方沖縄ではそのつながりがまだ残っていて「七夕はお墓掃除をする日」という単純明快な認識が一般的だ。
いずれにしても、ご先祖様にお盆の到来を知らせ、お墓を清める日という七夕本来の性格を受け継いでいるのは大変よいことであり、自慢のタネといっていいだろう。

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吉田 直人 よしだ なおひと

沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。

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