2022/12/11

「美ら海水族館」入館料とうとう値上げに胸の内は複雑

2022年の10月1日から沖縄美(ちゅ)ら海水族館の入館料が値上げされた。
コロナ禍による入場者の激減、円安や物価高による餌代の高騰、さらに将来の大規模修繕に備えるためでもあるという。
そこでこの機会に、ウチナーンチュが考える美ら海水族館の立ち位置について少し考えてみたい。

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南部の観光業者から恨みを買うほど

沖縄の美しい海をそのまま切り取ったような水族館として大人気なのが美ら海水族館。

沖縄本島北部の本部という田舎町にあるが、そのおかげで町内の道路が渋滞するという、ほとんどありえない現象まで引き起こした。

逆に、南部の観光スポットを訪れる人が激減し、商売あがったりと嘆く関係者もいる。その社長は「国のせいで倒産するさ~」と、やけくそで泡盛のグラスをあおるのだ。

 

もちろんそれだけの価値はあるのだが・・・

彼のいうように、美ら海水族館は国営である。所管は内閣府だ。入場料はこれまで1880円だった。値上げ前でも国営にしては高いという声があった。

たしかに1時間か2時間でサッと見る程度なら高い。しかし、1日かけてじっくり見るなら高くない。もちろん丸1日楽しむだけの内容は十分にある。

美ら海水族館の魚を見ていて、筆者は「うまそう」と思ってしまう。このジンベイザメで、かまぼこが何個作れるだろう。

 

コストがかかっているのもわかるし

建設にばく大なコストがかかったことは理解できるし、維持費もかなりのものだろう。ジンベイザメの餌代だけでも相当な額になるはずだ。

それと、地元の漁師に聞いた話だが、自然界と同じように水槽の中でもでかい魚が小さい魚を食ってしまうことがけっこうあるらしい。

そのため、ときどき漁をして魚を補充しているという。こんなことにも当然経費がかかる。そんなことも考えると多少高くてもしかたがない、と考えるムキもある。これは観光客に多いようだ。

ただし、地元はそうではない。美ら海水族館以前にも古い水族館があって、こちらの入場料は800円だった。地元の人間はどうしてもこれと比較してしまうので、高くなった印象を持つ。

 

大人で300円の値上げ

さて2022年の秋、開館以来据え置かれていた入館料が値上げされた。

大人は1880円から2180円、高校生は1250円から1440円、小中学生は620円から710円となった。

ちなみに年間パスポートというのもあって、こちらは大人4360円だ。2回行けば元は取れることになる。

2022年11月1日に開館20周年を迎えた。たしかに施設の傷みも出てくるだろうから、修繕のための資金を確保しておきたいのは理解できる。

 

さらに高嶺の花になりそう

ちなみに那覇市に住む夫婦が小学生の子ども2人を連れて、クルマで美ら海水族館に行ったとして経費を計算してみよう。

入館料は2180円×2に小中学生料金710円×2で計5780円。交通費は、高速代が往復2000円、ガソリン代が3000円の計5000円。昼食代が3000円。飲み物やおやつなども入れると総計で1万5000円ぐらいになる。

この額は、日本一貧乏な沖縄県民にとっては非常にきつい。おとうさんの1日の稼ぎが軽くふっ飛んでしまう。タクシー運転手の月収が手取り15万円もあればいい方なのに。

というわけで、沖縄県民にとって、美ら海水族館は高嶺の花でもある。

「行ったねぇ~?」「行けるわけないさ~、高いのに」「うちは行ったけど、子どもの入館料はお年玉から出させたよ」などと、おかあさんたちは声をひそめるのだ。

 

ウチナーンチュの誇りではある

とはいえ、県民の大切な財産であることも事実である。全国放送のテレビで紹介されると誇らしく思ったりする。

そう考える要因の1つは、水槽正面に使われている透明アクリルパネルの大きさが世界一(完成時。2022年現在では中国の水族館が世界一)で、ギネスブックにも載っていること。

柱を1本も使わずに、7500トンもの海水の水圧に耐えるこのアクリルパネルはたしかにすごい。

作ったのは香川県に本社を置く会社だが、美ら海水族館開館以降、中東などからも引き合いが来たという。

外国人に見せられるのは砂漠を歩くラクダぐらい、でもオイルマネーは使い道に困るほどある、という国が観光客誘致と子どもの教育用に巨大な水族館を作りたがっていたわけだ。実際、ドバイに水族館ができている。

たしかに砂漠の民にとってはカルチャーショックを越えた感動的な施設になるだろう。

 

いずれ島人割引とかを導入してほしい

2017年度、美ら海水族館の入館者は500万人を超えた。翌年には累計で1億人を超えている。このペースで行けばいずれは建設費をペイしてトータルで黒字になるはずと思っていた。

それが主としてコロナによって遠のいてしまい、値上げという事態になってしまった。

しかし、いずれ建設費をペイしたら、沖縄県民だけでも入館料を安くしてくれないだろうか。島人(しまんちゅ)割引とかなんとか称して。あるいはフランチャイズ式の水族館を海外で展開して、もうかったら還元するというのはどうだろう。

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吉田 直人 よしだ なおひと

沖縄県今帰仁村生まれ。19歳まで沖縄で過ごし、20代は横浜に住む。大学卒業後は都内の出版社に勤務し、30代でフリーランスとなって沖縄に戻る。その後はライター兼編集者として活動。沖縄移住に関する本など多数の著作あり。

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